100年人生は「戦争くらい起きる」と考えよう 島田雅彦が語る「サバイバル能力」とは

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島田雅彦(しまだ まさひこ)/小説家。1961年、東京都生れ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1983年『優しいサヨクのための嬉遊曲』を発表し注目される。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、1992年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞、2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞を受賞。著書は『天国が降ってくる』『僕は模造人間』『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』『フランシスコ・X』『佳人の奇遇』『徒然王子』等多数(撮影:梅谷秀司)

現在、多くの人々が、それなりにハイパーテクノロジーを生活の中に取り込んでいます。私自身もそうですけれど、労働や思考は、かなり機械やコンピュータに依存していますね。車もコンピュータ制御、インフラも電子制御です。

若者を見ていても、1日に6時間くらいスマホと付き合っている。これは完全に依存症だと思いますけれどね。彼らからスマホを奪ったら、すぐに何もできないという状態になりそうです。こういう状況で、仮に何らかの理由でインフラが機能しなくなったとき、どうなるかを考えてみましょう。

電気の供給が止まると、すべてが全停止します。通信、交通はもちろん、ガス、水道、ガソリンも供給できないし、流通もだめ。そして、毎日がキャンプになります。里山で薪(まき)拾い、川で洗濯。水は煮沸、水洗トイレも使えない。

最初の3カ月ぐらいは、まあ、都市の狩猟採集生活ということで、コンビニなどを襲って生きていけるかもしれませんが、これも備蓄が尽きれば終わりです。しかし、野菜なら早いものなら3カ月で収穫できますから、すぐに種を植えるといい。

こういうときに必要なスキルを、全人口の何パーセントが持ち合わせているかを考えると、なかなか面白いですよ。若者よりも、老人のほうがはるかにスキルを持っているのではないでしょうか。

分業体制に参加するためにスキルを養え

人が集まると競争が起きて、サバイバルゲームが始まってしまいますから、動ける間に都市を離れるといいでしょうね。それも、小集団で、それぞれのスキルによる分業体制を作り、助け合いながら生きていくのが最も有利で現実的だと思います。

歴史を振り返っても、大量死が起きたあとは、ライフスタイルの原点に返るということが起きています。

第2次世界大戦後、ユダヤ人は大量虐殺の時代をサバイバルしたわけですが、イスラエルが建国され、世界中から多くの移住者が集まるなか、ロシアからの移住者たちがリードして、キブツと呼ばれる集団農場のような共同体を作りました。

そこでは、食料生産からインフラ整備、教育や芸術活動、特産品づくりまで、もろもろのすべてを小集団のなかで自給自足体制で行おうとした。その後、資本主義の浸透によってキブツは衰退していきますが、「資本主義崩壊後」というものを想像するときには、参考になるのではないかと思います。

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