100年人生は「戦争くらい起きる」と考えよう 島田雅彦が語る「サバイバル能力」とは

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こういった小集団は機動性がありますから、その場所がダメになったら、「出エジプト」じゃないけれど、どこかへ移動していくこともできますしね。日本でも、3.11の震災後はそういうイマジネーションを多くの人がどこかで共有しているのではないでしょうか。

原発事故で福島から避難した人々も、やはり「脱出」を余儀なくされているわけですね。住み慣れた場所から離れて、別の場所で新たな生活を立て直すわけです。

一人ひとりが、どこにいてもそのスキルを役立てられる。分業体制のなかで、一人の重要な人物として参加する。その一員としての資格を得るという意味でも、やはりさまざまなスキルを身に付けておくということが、サバイバルのひとつの条件になるだろうと思います。

『ライフ・シフト』のなかでも、「見えない資産」として、そのような考察がありましたね。おカネには換算できないけれども、そのときに備わっている知識やスキルがいかに必要か、という話です。

こういった話は、ビジネスマンにはあまりピンとこないかもしれませんが、戦争について考えてみましょう。

世界では、為政者たちによって時に悪政が敷かれたり、公共性に反する権力の私的濫用が行われたり、極めて内向きの排他主義が目につく状態です。日本だけでなく、アメリカもヨーロッパも極右政党が台頭し、全世界的な傾向のように見えます。

そんな中で、狂った愚かな為政者たちが、逆上して、突然戦争に打って出ないとも限らない。戦争ビジネスというものが機能している以上、そのビジネスによって生き延びようという資本主義的な考えと戦争は不可分ですし、いずれ戦争は起きるでしょう。

100年時代で寿命が長くなったとしても、実は破滅に向かっていくという皮肉なことが起きて、「こんな世界に100歳までも生きたくないよ」と思う未来が来てもおかしくはないということですね。

連載中の小説『不死男』(文藝春秋『文學界』)では、159歳というロングスパンで生きた男の人生を描いています。いまはまだ青春時代で、明治の半ばくらいですが、3人分の人生をひとりで生きる様子は、書いていて実に長いと感じます。

特に日本人は、『ライフ・シフト』に書かれている内容に、こんなにポジティブにできないよという感覚を持つかもしれません。

イギリス人は「衰退後」を先取りする

著者のリンダ・グラットンは、イギリス人です。彼らはもともと、新しいライフスタイルを考えるのが早いんですよ。産業革命をいちばん最初にやって、いちばん最初に衰退した国ですから、衰退後を先取りして体現しているところがあるわけです。

自分の国だけでは資本の形成が成り立たないから、植民地を拡大していったわけですし、金融業を中心とする情報資本主義時代に入っても、成長していく各国において、金融業の暗躍を行って延命してきたところもある。

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