40代は「一生食える力」の最貧困世代である 佐々木俊尚が語る「ゆるいつながり」の大切さ

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妙なこだわりやプライドが、「つながる力」を阻害しているかもしれません(写真:プラナ / PIXTA)
これからの時代、私たちはもっと上を目指す上昇志向でもなく、もっと外を目指すクールなアウトサイダー志向でもなく、「いまこの瞬間に全意識を傾けながら」ゆるくつながる生き方が普通になると説く佐々木氏に、その考え方とベストセラー『ライフ・シフト』の共通点を語ってもらった。

日本の企業システムは、長い老後を考えていない

『ライフ・シフト』は11万部のベストセラーとなっている(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

長寿社会というと、多くの日本人はネガティブな印象をもっているのではないでしょうか。認知症や孤独死などの問題がメディアでも取り上げられ、「老後」というと何となく不安感が漂う。でも『ライフ・シフト』は長寿社会をポジティブに捉えているところが今までになかった視点で、面白いと思います。

日本でも、大企業に就職できれば一生安泰という時代は終わりました。グローバリゼーションで業界構造も様変わりしましたし、昔のように企業にぶら下がっていれば何とかなる時代ではなくなりました。しかも100歳ライフなら定年後の人生は約40年も続く。その間どう生きていくのか。

じつのところ、日本の産業構造は、それを考える仕組みにはなっていません。役所でも大企業でも、専門性がないまま定年を迎えてしまう人が多い。たとえば大企業の出身で、外回りや管理部門をひと通りやって「私はゼネラリストだ」と胸を張る人がいる。しかし人材コンサルタントにいわせると、そういう人は役に立たないそうです。彼はゼネラリストではなく、“その会社のスペシャリスト”だから。

日本の企業は調整の仕事がやたらと多い。「この話はまずあの人に通せ」とか「俺はそんな話聞いていないぞ」などと言い出すオジさんが必ずいるから(笑)。トップダウンなら1カ月でやれるのに、調整が必要で3カ月かかってしまう。日本の労働生産性の低さはこうしたところに起因します。

いずれにせよ、調整の仕事を懸命にこなして定年を迎えても、その人がやってきた仕事は企業内の人間関係というインフラのうえでしか成り立ちませんから、一歩会社の外に出るとその能力は発揮されない。つまり自分の専門性を育てるような仕事をしていかないと、定年後にあまり明るい人生は開かれないのです。

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