有名な桶狭間の戦いの前に、織田信長は「人間五十年、下天の内をくらぶれば…」という能「敦盛」を舞って出陣する。戦国時代は乳幼児死亡率が高かったので、平均寿命は50年よりもっと短かっただろう。これに比べて我々の平均寿命ははるかに長くなり、社会の制度も人々の人生設計も大きく変わった。
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、 (翻訳)池村 千秋、東洋経済新報社刊)は、人生を教育・仕事・引退という3ステージで考えるモデルは崩壊すると主張している。日本では2007年生まれの子供の半数は107歳以上まで生きられるはずだというのは驚きだ。
多くの人が100歳過ぎまで生きる時代に
第2次世界大戦直後の1947年に男50.06年、女53.96年だった日本の平均寿命は、2015年には男80.79年、女87.05年にまで長くなった。
2012年に行われた将来推計人口で、標準的なケースである中位推計では2060年には平均寿命は男84.19年、女90.93年になると見込んでいる。半世紀余りで3年少々という平均寿命の伸びはたいしたことがないようにみえるが、90歳過ぎまで生きられる人の割合は大きく上昇する。
明治から1970年頃までの間は、乳幼児の死亡率の低下が、平均寿命の伸びの大きな要因だった。しかし1970年頃になると若い世代の死亡率が低下する余地は非常に小さくなり、その後は、高齢になるまで生きられる人の割合が高くなったことで、平均寿命が伸び続けている。
例えば、明治時代に男性で90歳まで生きる人は、生まれた赤ん坊の1%にも満たなかったが、1970年には3.5%になり、2015年には4分の1を超えるまでになった。将来推計人口の想定している平均寿命が実現すれば、2060年には半分ぐらいの人が90歳時点で生き残っているだろう。
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