共和党のトランプ候補が民主党のクリントン候補を大差で破り、次期米国大統領に決まった。トランプ氏は大統領選挙で米国第一("America First")を掲げており、外交政策が内向きになると懸念されている。しかし、ヒラリー・クリントン大統領が誕生していたとしても、米国が世界の経済・政治のために自国の利益を犠牲にすることは難しくなるという大きな流れは変わらなかっただろう。
ソビエト連邦が崩壊した後は、米国が世界唯一の超大国だと考えられてきたが、新興国の躍進によって相対的な経済力は低下してきた。単独行動を回避したオバマ大統領の外交政策は弱腰と批判されることもあったが、米国の力が相対的に低下してきたという現実を反映したものだったといえるだろう。
人口と1人当たりGDPの変化で考える
各国の経済規模は、人口×1人当たりGDP(国内総生産)だと分解して考えると分かりやすい。人口の動きは緩やかなので、急速な経済規模の相対的な変化は1人当たりGDPの動きが作り出してきた。
中国の人口は1980年時点には日本の8.4倍だったが2000年には10.1倍になった。それにもかかわらず、GDPは1980年に日本の0.281倍だったものが2000年には0.257倍へと低下している。これは、中国の1人当たりGDPが1980年には日本の3.3%だったのに2000年には2.5%に低下してしまったからだ。しかし、2000年から2015年の間には、人口が日本の10.9倍になっただけでなく、1人当たりGDPも日本の24.9%に高まったことから、中国のGDPは日本の2.71倍になった。
人口が日本よりもはるかに多い中国のGDPが日本を下回るという状況が生じたのは、日本経済が順調な発展を遂げる一方で中国が大躍進政策や文化大革命の中で経済的には停滞を続けたためである。中国は1978年に改革開放路線に転換し、1990年代に入ってからは徐々にその成果が表れ始めた。2000年代に入ると中国の1人当たりGDPの拡大ペースは日本のそれよりも加速して、中国の経済規模が日本を大きく上回るようになった。
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