大統領選をドナルド・トランプ氏が制したことの大きさや重さが、政治指導者やオピニオンリーダーの心に刻み込まれ始めた。トランプ氏に投票した有権者のうち37%までが、同氏の資質は大統領にふさわしくないと見ていた。彼らは、そうした懸念を棚上げしたのだ。
トランプ氏は数多くのライバルに競り勝って共和党から指名を受けた後、そのポピュリストとしての熱情を、夫のビル・クリントン元大統領とともに25年超の政治キャリアを積み重ねたヒラリー・クリントン氏にぶつけた。さらに、メディアから米軍指導者、司法制度、選挙制度自体に至る、既存の組織をそしることを意に介さなかった。
そして有権者は、脱落した他の候補たちほどには、トランプ氏の発言の数々を意に介さなかったようだ。
エリートと有権者の受け止めは逆だった
政治評論家のモリー・ヘミングウェイ氏は、「民主、共和両党のエリートたちはトランプ氏の言うことを表面的に聞くだけで、真剣には受け止めなかった。しかし有権者は逆だった」とコメントしている。
かつて民主党を支持していた白人の労働者階級を中心に、あまりに多くの有権者が、所得格差の拡大や大学の学費高騰、大卒者とそれ以外の者との待遇の違いに怒りを抱いていた。
しかし、権力者がそうした不満を無視し続けたため、有権者は既得権者への挑戦を公約した「率直な」トランプ氏に投票した。
コリン・パウエル元国務長官やミット・ロムニー元共和党大統領候補ら、尊敬を集めて来た指導者は、トランプ氏は大統領に必要なモラルや知性、そして資質を欠いていると強く警告したが、有権者には響かなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら