トランプ氏が、米国の次期大統領に決定した。そのこと自体が意外であったかどうかは別として、その直後の日本株の暴落や急速な円高は、事前に「トランプがもし当選すれば、市場は不透明感から波乱に見舞われるだろう」として唱えられていたような市場の動きであり、意外性は乏しかったと言える。また、「いずれ内外株価や外貨相場は、落ち着きを取り戻すだろう」という見立ても、かなり広い範囲で共有されていた感が強い。
想定外に強い「米大統領選後」の相場
しかし、早々に投票翌日から、米国株価が上昇色を強め、ニューヨークダウ工業株指数が史上最高値を更新していることについては、株価の戻りがこれほど早いと見込んでいた向きは極めて少なかったのではないだろうか。
またそれにつれて、米ドルの対円相場も、急速な戻りとなった。加えて、内外株式市場では、たとえばトランプ氏が「インフラ投資に力を入れる」と語ったことを受けて、個別に建機などのインフラ関連銘柄が買い上げられている。全体観による株価上昇だけではなく、個別銘柄にも買いが入っているというのは、投資家の積極的な姿勢が表れていると言える。
長期的な観点では、トランプ政権は、経済面に限れば、事前に懸念されていたほどひどい政権にはなりにくいだろう(外交や安全保障、米国内で表面化した階層間の対立といった点については、他の専門家に論を譲りたい)。というのは、トランプ氏は実業家であるため、経済的な感覚を全く欠いているということはないし、そもそも経済を活性化したいはずであるからだ。
加えて、米国は「ポリティカル・アポインティー」(政治任用制)の国だ。すなわち、政権が交代すると、各省庁のトップはもちろん、少し下の階層まで、管理職が一気に交代する。
現在ホームページでは、トランプ氏の政権移行チームは、4000人以上の希望者を募っている。これをチャンスと見て、有能で前向きな人たちが、決してトランプ氏自身の方向性には共感をしなくとも、登用を希望してくる。優秀なスタッフが集まり、新大統領に進言すれば、非常識な政策はとられにくくなる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら