米国共和党の大統領選予備選が佳境を迎えている。フロリダ州での敗北をうけてマルコ・ルビオ上院議員が3月15日に撤退。ドナルド・トランプに対抗するのは、自由至上主義者で文化的保守のテッド・クルーズ上院議員とオハイオ州知事ジョン・ケーシックだけになった。しかし、クルーズはトランプよりも主流から遠く、ケーシックは常識的な穏健派だが地元でしか勝てていない。こうなると、トランプは共和党での指名獲得に向けて王手をかけたといえるだろう。
筆者はこの現象がアメリカの病理を映しているとも、トランプが白人の不満や怒りや差別意識を煽って扇動しているとも思わない。暴力的な抗議運動もあり、差別主義者のトランプ支持者もいようが、ティーパーティー(茶会)系など従来の伝統的な共和党員を含め、勤勉でまともな保守的なアメリカ人が、これまでの12回のテレビ討論会をはじめとする候補者同士の戦いを静かにみつめながら下した、わりと普通の判断でもあったように思う。
ルビオの「ロボット演説」
マルコ・ルビオは裕福ではないキューバ移民の両親のもとで育ちながらも学生ローンに頼って法律を学び、地元フロリダの州議会で頭角をあらわして弱冠35歳で議長となった経歴をもち、「共和党の未来」と目されていた。彼は2011年に国政に進出した1期目の上院議員であり、弁がたつだけでなく、見た目も爽やかな予備選の大本命だった。筆者も昨年夏からトランプの快進撃をみつめながら、彼は面白いけれど最終的にはルビオを選ぶ共和党であってほしい、と思っていた。だが候補者が絞られてきた2月から、遠目にも致命的な場面がいくつかあった。
まず、2月6日の討論会での「ロボット演説」だ。ニューハンプシャーの予備戦を控え、ジェブ・ブッシュはじめ州知事経験者らは、ルビオは8年前のオバマ大統領同様1期目の上院議員であり、大統領の職務をこなすには経験不足と批判していた。それに関して司会者がルビオの上院議員としての実績を尋ねると、彼は自分の実績には軽く触れただけで「オバマ大統領は自分のやっていることがわかっている確信犯だ。計画的にアメリカを作り変えようとしている。自分が大統領になったら世界史上最高の国アメリカを子供達に残す」という現大統領批判を展開した(この時点ではまだ会場から喝采を浴びていた)。
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