日本人が知らない"カネの国"アメリカの美徳 「カネを作る人」がもっとも尊敬される

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トランプ氏が体現しているのは「メイク・マネー(カネを作る)」という、アメリカ人がもっとも尊敬する美徳だ(写真:REUTERS/Rebecca Cook)
アメリカの政治思想を知るためには、起業家精神、そして小さな政府を説いたアイン・ランドを知ることが不可欠だ。にもかかわらず、ほぼ日本では無名である。今回、アイン・ランドの著作の翻訳者である脇坂あゆみ氏に、「現代米国とアイン・ランド」というテーマでリアル・アメリカを解説してもらう。

 

前回:日本人が知らないアメリカ的政治思想の正体

米国大統領選の共和党の予備選で、ドナルド・トランプの勢いが止まらない。米ギャラップ社が12月28日に発表した「尊敬する人物」に関する世論調査では男性のトップがオバマ大統領(17%)、2位はローマ法王フランシスコとトランプが5%で並んだ。

トランプ旋風についてはいくつか解釈がある。まず彼はワシントンのアウトサイダーだというもの。大統領選ではアウトサイダーであることがレトリックとして強い。しかも数カ月前に共和党員となった本物の部外者だ。次に、移民やイスラム教徒を排斥する強硬な発言で中産階級の下流白人の代弁者になっているという見方がある。

実際にトランプが攻撃しているのは「不法」移民と「テロリスト」だが、それはさておく。さらに彼はデマゴーグだとする説がある。不安をあおりながら平易な言葉を繰り返し、民衆を扇動するポピュリストの一人、というもの。反知性主義の一現象と位置づける見方だ。

共和党内部の階級闘争が顕在化

こうした解釈を裏付けるような調査もある。2016年1月号の『アトランティック』誌によると、38%のトランプの支持者の年収は5万ドル以下であり、彼の登場がきっかけとなって共和党内部の「階級闘争」が顕在化したという。米国経済は金融危機以前の水準に回復したが、2014年の時点で、平均世帯収入は危機以前と比べて4000ドルも下がっている。

一握りの富裕な自由主義者に支えられた共和党のエリートたちは、経済危機後の経済回復から取り残されたこれらの伝統的な共和党支持者の不満をまるで受けとめられていないというのだ。

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