日本人が知らない"カネの国"アメリカの美徳

「カネを作る人」がもっとも尊敬される

だがアウトサイダーであることが大統領候補としての売りであるのはいつものこととして、本当に39%(12月23日CNN世論調査)もの共和党員が、移民やイスラム教徒などに既得権を奪われることを恐れ、雇用不安をつのらせるあまり、強いアメリカを唱える保護主義者トランプに熱狂しているのだろうか。

一定の教育を受け、5万ドル超の収入がある62%のトランプの支持者たちは、いったい何に魅了されて、従来の共和党主流派からすればありえない人物を誰も無視できないリアルな候補にしてしまったのだろうか。

トランプの支持層は広がりつつある

肩をすくめるアトラス』(脇坂あゆみ訳)は、3冊に分かれた文庫版もある(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトのジャンプします)

12月までの共和党予備選に関する前回の記事で、保守的なアメリカの政治家と政治文化に多大な影響を与え続けている20世紀の小説家アイン・ランドの思想について書いた。

12月上旬のアイオワの世論調査で一時的にトップになったテッド・クルーズと、一定の存在感を保っているランド・ポールにはあきらかに彼女の思想の影響がみられたからだ。特にクルーズは茶会の寵児といわれており、ランドファンが最も好む候補者でもある。

一方、その後もいっこうに勢いの衰えないトランプ旋風を眺めていて気づいたのだが、実はトランプも、2010年の中間選挙で共和党を圧勝させた茶会系の共和党員に大きく支持を広げつつある。

ドナルド・トランプの支持基盤は、雇用不安におびえ移民や異民族を排除しようとする低収入の白人労働者だけではない。トランプは、過激なナショナリストではなく一部の過激な自由至上主義者、自由な経済活動こそが貧困を解決すると心から信じている人たちの支持も集めつつあるのだ。

トランプのキャンペーンを仕切る選挙対策本部長のコーリー・ルワンドウスキーは、コーク兄弟がスポンサーして茶会運動の屋台骨となったAFP(Americans for Prosperity)のニューハンプシャー支部で長くディレクターを務めていた人物だ。先月トランプ陣営に加わった広報担当のカトリーナ・ピアソンもテキサス州ダラス茶会党出身の筋金入りの自由主義者の活動家である(余談だが、ニューハンプシャーとテキサスといえば、アメリカの自由至上主義者たちが集う二大拠点となっている)。

11月のキニピアック大学の調査では、茶会系の有権者のうちトランプ支持者が32%とクルーズの30%を上回った。前回も述べたが、トランプの主張と政策は、強い軍隊を維持することと不法移民に厳しいことを除けばクルーズとはまるで違う。茶会の支持者が求めるのはあくまで財政規律であり金融政策に介入しない小さな政府である。にもかかわらずトランプは、かれら自由主義者たちの心をつかんでしまったらしい。

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