共和党候補がトランプに絞られたのは必然だ 討論会を通じリーダーシップへの期待高まる

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その点、トランプは実に「リアル」なのである。同じテーマを繰り返しはするが、そこにスピーチライターの存在を感じさせない。自分自身の生活と実業界での経験をもとにした本音を語っているか、戦術として台本のない本音を語っているように見せているかのどちらかである。

大統領選は究極のリアリティーショーである。トランプが自ら制作に関わり、君臨したテレビの『アプレンティス』と同様、複数の野心家の候補が試練にさらされ、少しの迷いや弱みが致命傷になる。審判はアメリカの有権者だ。彼らは昨年からではなく、トランプという人物と彼の物語を何十年にも渡ってみつめてきている。

求められているのは「仕事ができるリーダー」

テレビをみてきた視聴者ならば、トランプの人格も言動も、おそらくは思想信条もある程度は知っている。彼が人種差別主義者でも過激派でもないことも知っている。彼は多くの人にとって、口が悪く、勝つべきときにはとことん攻撃の手をゆるめることがない戦士だが、基本的には恐ろしく有能で、面白く、家族を大切にする愛すべき人物なのだ。

もう20年程も前のことだが、筆者の知人で現在関東・東北で住宅の建設や売買を手掛けている経営者の男性が、学生時代にマンハッタンを訪れた際、トランプタワーでたまたま本人を見かけ、写真撮影を依頼した。

トランプは快く撮影に応じ、後日知人が手紙を書き送ったところ、「君の志とやる気に感銘を受けた。これからもがんばれ」という趣旨の丁寧な返事が届いたそうだ。極東の一学生にその気配りである。全米で広く商売を手がけている彼の選挙活動は、半世紀前から始まっていたと考えてもよい。

アメリカは、なんであれ仕事ができるリーダーを求めている。前回の記事の繰り返しになるが、実績のある経営者に国政をまかせてみたらどうだろう、と思い始めているのではないだろうか。

ところで昨年12月の記事で、筆者はトランプが指名を獲得し、クルーズを副大統領候補にするのではないかと書いたが、今年に入っての両者の激しい罵倒合戦のあとでは難しいと思われる。それ以前に、最低限のスタッフで選挙戦をスタートしたトランプ陣営の全貌も政策も、誰もよくわかっていない。アメリカ大統領選での彼の仕事はこれからである。

脇坂 あゆみ 翻訳家

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わきざか あゆみ / Ayumi Wakizaka

訳書にアイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』(アトランティス社)、『われら生きるもの』(ビジネス社)。イタリア映画「Noi Vivi」の字幕翻訳も。ランドの作品を翻訳するかたわら、アメリカのリバタリアン思想や政治文化の動向をウォッチし続けている。ジョージタウン大学外交大学院修士課程修了。米国公認会計士。

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