またそもそも米国は、民間企業が政府を当てにせずに、自力で利益成長を目指す文化がある。経済政策が経済に全く無縁だとは言えないが、民間主導の米国経済の長期成長、という姿は揺らがないだろう。
この点で、長期的には米国株価の上昇や米ドルの上昇(ただし極めて緩やかなもの)を予想しているが、目先の相場は、反動安をみせる恐れが十分残っている。
プラス面だけを見て「先走る市場」のリスクに注意
たとえば全体観としては、選挙戦が中傷合戦の様相を帯び、具体的な政策論争に至らなかったため、市場はこれまでのトランプ氏の発言などから、将来の政策を予想し、経済にプラス、特定の産業にプラスとして、先走っている。
しかしトランプ氏が、現実を踏まえ、自身の過去の発言から路線変更する可能性がある。あるいはトランプ氏自身は、これまでの発言に沿った政策を打ち出そうとしても、周囲のスタッフや議会共和党(特に穏健派)に、翻意を促される展開もありうるだろう。
個別の政策をみると、インフラ投資の拡大は、おそらくありうるだろう。現時点では、交通インフラを中心に、5500億ドルの投資を行なうとの意向が表明されている。
また、法人税の減税の方針も、今のところ強く打ち出してきている。これが経済全般にプラスだとして、株価は上昇し、長期金利も10年国債利回りが2.0%を超えてきている。米ドル相場は、米国経済の拡大、米株価の上昇、それを受けた自然な金利上昇と解釈し、今のところ対円で強含んでいる。
しかし、公共支出を拡大し減税すれば、財政赤字が拡大する(もちろん、そうした財政政策により景気が拡大し、法人税収や所得税収が自然に増えて、財政が改善する、という可能性はゼロではないが)。こうした解釈が主流となってくれば、長期金利の上昇は財政悪化要因によるという「悪い金利上昇」と理解されて、米ドルの売りにつながる展開が否定できない。
また、長期金利の上昇が緩やかであればよいが、急速なものとなると、それが株価を押し下げ景況感を悪化させうる。この場合も、米ドル安の局面が生じそうだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら