米国人が「人格」で大統領を選ばなかった理由 トランプの何が人々の心をつかんだのか

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トランプ氏は3つのテーマを掲げ続けた。米国の雇用を損ないかねない自由貿易への反対、犯罪やテロの拡大につながりかねない移民受け入れへの反対、そしてイラクやアフガニスタンなどへの危険な軍事的関与への反対だ。いずれも共和党が長く掲げ続けて来たドクトリン(教義)に反し、その一部は民主党の主張とも相いれないものだった。

トランプ氏の人間としての欠点や、不可能なことを約束しようとする姿勢は、彼が「信頼できること」に比べれば重要ではなかったらしい。彼が毎日、白人の労働者階級のために心を砕いているのは明白だ。同氏は米国史上で初めて、公職や兵役に就いた経験がまったく無い大統領となる。

世論調査は、選挙当日に有権者が誰に投票したのか正確に調べることと、選挙前に有権者が誰に投票するのかを予測することで成り立っている。だが今回、世論調査員はその両方を読み誤った。

2016年の選挙で有権者登録を経て実際に投票した民主党員の数は、前回2012年選挙から700万人減った。クリントン氏は、2008年と2012年にオバマ氏が当選した時のような熱狂を作り出させなかったのだ。

クリントン氏は都市部での高学歴な白人の多くから支持され、バージニア州やミシガン州を制した。しかし、いずれの州でも事前予想に反して辛勝だった。

そしてフロリダ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の農村部で白人の票を集めたことが、トランプ氏の勝利につながった。

全米の得票数はクリントン氏の方が多かったが

トランプ氏勝利の背景には「エレクトラル・カレッジ(選挙人団)」という、奇妙なシステムの存在もある。大統領選では、人口に応じて各州に個別に割り振られた選挙人団をどれだけ獲得するかで勝敗が決まる。ある州で過半数の票を獲得した候補が、その州の選挙人団を原則総取りする。全米での総得票数でトランプ氏を上回ったクリントン氏が敗北したのは、この仕組みがあったからだ。

ニューヨークのホテルで9日、敗北を認めるクリントン氏(写真: ロイター/Carlos Barria)

たとえばクリントン氏は、人口が全米最多のカリフォルニア州で大勝した。だが、同州の選挙人団55人を獲得するには州内での得票数がトランプ氏よりも一票以上多ければ十分だった。

民主党の大統領候補の1人だったバーニー・サンダース上院議員とは違い、クリントン氏は労働者の窮状に目を向けていないように見えた。サンダース氏が富裕層に有利な経済体制を批判した一方で、クリントン氏は現状維持派とみなされ、夫とともに莫大な蓄財を築くのを手助けした銀行との親密すぎる関係も懸念された。

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