世界中が固唾を飲んだ。11月8日(米国時間)の米国大統領選挙。大接戦の末、共和党のドナルド・トランプ候補(70)が民主党のヒラリー・クリントン候補(69)を破り、次期大統領となることが決定した。2017年1月末に就任する見込みだ。
選挙キャンペーン中、トランプ氏はマイノリティ(少数者)や女性、移民について、攻撃的で敵対的な発言をし、時に暴言を吐いたこともあった。トランプ氏を批判する人たちからの暴露によって、一層誇張されたきらいはあるが、それにしてもその言動は従来の常識ではありえないものだ。共和党の内部からも強い非難の声があがり、世論調査の支持率では、クリントン氏におよばない状況が続いてきた。
しかし、選挙間近になり、クリントン氏のメール不正使用問題についてFBI(米連邦捜査局)が捜査再開を公表したことを機に、クリントン氏の支持が下がり、トランプ氏が優位に立った。結局、FBIはクリントン氏を訴追しないこととしたものの、トランプ氏優位の状況は動かなかった。
不満の強い中低所得層からの支持
今回の基本的勝因は、首都ワシントンの既成政治に対する不満が強い、中低所得層の支持を得ることができたからだ。米国には低所得者の方が高所得者よりも税負担率が高いという現実がある。トランプ氏の場合、不満を抱えている人たちにわかりやすい言葉で語りかけて「偉大な米国」を取り戻すと、米国民の自尊心をくすぐった。
実際に新政権が中低所得層のためにどのような政策を講じるか、それに対する既成勢力の反発がどのように起こってくるかが、内政の焦点となる。これから政権発足に向けて、さまざまな準備が進められるが、内政・外交ともに強い不安が付きまとうのはやむを得ない。トランプ氏が核の発射ボタンを持つことなど「想像を絶するくらい恐ろしい」と思う人もいる。
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