トランプ当選で日米安保が直面する重い課題

異色の新大統領が進める外交政策に募る不安

まず問題となるのが、選挙戦からトランプ氏がしばしば言及してきた、不法移民対策だ。「不法移民が米国民の雇用を奪っている」「麻薬や犯罪を持ち込む」などと攻撃。「大統領になれば容赦しない」「米国から不法移民を追い払う」「新たな不法移民の流入を防ぐためメキシコとの国境に壁を作る」「費用はメキシコに払わせる」などなど、これまでの政権による生ぬるい対策は一新するといった、10項目の対策を発表している。

もっとも、事はそう簡単でない。トランプ氏は不法移民が米国民の職を奪っていると主張するが、米国は低賃金の労働力を必要としており、これまでの政権は法律違反があっても、ある程度は目をつぶってきた。米国内から不法移民をすべて追い出すと、米国の製品は価格が上昇して、競争力を失うに違いない。

不法移民問題の扱いを誤ると、ラテン系米国人(いわゆるラティノ)との関係が悪化する恐れもある。ラティノは全米で約3500万人(2010年の人口調査、全米人口の約16%)おり、これに不法移民を加えると、約5000万人に近いとも言われている。

イスラム敵視なら中東政策が躓く

イスラム攻撃も激しかった。

「イスラム教徒は入国を一切認めない」と発言したこともある。ただ、イスラム教を敵視することは、計り知れない影響が出てくる。米国内のイスラム人口は、2050年までに約2%に増加するとみられる。キリスト教徒やユダヤ教徒より多くなるとの説もある。予測にはかなりの幅があるものの、いずれにしても、着実に増加する傾向であり、遠からず米国の一大勢力となるのは間違いない。テロ対策は重要だが、イスラムを敵視して、中東政策が成功するはずがない。トランプ氏はイスラムに関する考えを修正せざるをえなくなるだろう。

トランプ氏の場合、人種差別的な発言もしている。第二次世界大戦中の悪名高い日系人強制収用についても、是認するような発言をしたので、猛烈な抗議を受けたことがある。

そして今後、最も注目されるのが、安全保障政策だ。日本に対してトランプ氏は、いわゆる「安保タダ乗り論」を繰り返し述べており、米軍撤退の可能性にも言及した。

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