医療の進歩で平均寿命が大きく伸びる可能性はかなり高く、その場合にはライフ・シフトのいうように多くの人が100歳過ぎまで生きるようになる。
信長の時代の人生50年の制度では現在の社会が維持できないように、現在の人生80年を前提にした制度では将来の社会を維持することはできない。今の若者は100年生きるつもりで人生を考えるべきだという、ライフ・シフトの主張はもっともなことだ。
先進諸国の年金制度は、基本的には現役世代が支払う保険料や税が年金の支払いに充てられる賦課方式だ。現役世代の人口が年金受給世代に比べて多ければ、それだけ軽い負担で多くの年金を支払うことができる。ライフ・シフトはこれを「ねずみ講」と言い切っているが、人口増加が止まれば、保険料負担に比べて手厚い年金給付を受けるという手品はできなくなる。
若い世代だけで高齢者を支えられない
日本の人口構造は、1960年には少数の高齢者を多数の若い世代が支えるという構造だったが、2060年には多くの高齢者を以前よりも少ない現役世代が支える構造になると予想されている。単に高齢者の数が増えるだけでなく、80歳、90歳を超えて多くの人が生きるようになるという人生の長期化も同時に起こると見られている。
人口を増やし続けてねずみ講を維持しようとするのは問題の先送りに過ぎず、いずれシステムは破綻する。抜本的な解決策は、人口が増えなくても大丈夫なように仕組みを変えることだ。
働く期間を変えなければ、現役世代の負担を高め、かつ、年金受給者への給付を削減する以外に方策はない。しかし、これでは負担が重くなる現役世代の不満は高まるし、年金が削減される高齢者の中で生活が維持できない人が多数発生してしまう。年金の給付額水準引き下げで公的年金制度は維持できても、生活保護などの制度に頼る高齢者が増え、この費用が増税などの形で現役世代の負担を増やすことになるだろう。
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