40代は「一生食える力」の最貧困世代である 佐々木俊尚が語る「ゆるいつながり」の大切さ
一方で、すべての人が会社に依存せず個人の力で食べていこうとすると、弱肉強食の世界になってしまいます。ここが難しい。とりわけフリーランスの世界では、しゃべりのうまいやつが成功する傾向にあります。コミュニケーション能力に長けていて、交渉するのが上手。
日本でも1990年代に成果主義だと盛んに言われていましたが、結局、自分の成果をでかい声で言える人が勝つ。成果が見えづらい管理部門の人はどうなるのかと問題視され、いつの間にか言われなくなりました。
私は、個人が専門性を意図的に高めていくと同時に、「ゆるいつながり」が必要だと思っています。仲間とかチームといった共同体です。第2の人生は、そういうところに目を向けてもいいのではないでしょうか。ノマドワーキングについて書いた拙著『仕事するのにオフィスはいらない』(光文社)でも触れているのですが、フリーランスはいずれ単体ではなく、チームによる仕事が当たり前になってくると私は考えています。プロジェクトごとに結成したり解散したり、再結成したり。
企業でもそうした組織論が語られるようになってきました。従来のように部長、課長、係長といった縦割りの構造ではなくて、プロジェクトごとにチームを作り変えるという仕組みです。今は長期計画が立てられない時代といわれています。何が売れるかもわからない。短期的に小ロットで試してみて、うまくいったら量産するし、失敗だったらすぐに撤退する。機動力が求められますから、組織もそれに対応できるように変わっていくのだと思います。
40代にとっての安定とリスク
『ライフ・シフト』では世代の違う3人が登場しますよね。70代のジャックは「教育・仕事・引退」という3つのステージを歩み、従来の価値観のままで逃げ切れる世代です。20歳目前のジェーンは、偶発的な出会いを大切にして、自分の専門性を高めていっています。
日本でも35歳以下の世代はこうした世界観をもっている人が多い。1980年代生まれの「ミレニアルズ」ですね。彼らはシェアハウスに住むことに抵抗がない。プライバシーの感覚とか、見知らぬ他人への信頼感とかが上の世代とは異なります。大企業志向がある一方で、一生そこにしがみついていこうという感覚もなく、多様な生き方があることを知っている。生まれたときから不況ですから、結構あっけらかんとしているんです。
問題は今の40代、『ライフ・シフト』でいうならジミーの世代です。たとえば今45歳だとしたら、定年まであと15年。いまさら劇的に生き方を変えられません。家族もいるし、今の年収を維持したい。守るものがあるから、思いつきで会社を辞めてIターンするという冒険もできません。
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