経営なんて、そんなに難しいものではありません。要は、社員の心を掴(つか)めばいいのです。社員にやる気を持たせること。それだけで十分だということです。経営がうまくいかないのは、その社員のやる気を起こさせていないか、やる気を削ぐようなことをするからです。
社員が、一生懸命仕事をしているにもかかわらず、その努力を考えず、結果が出ないと怒鳴りまくられれば、誰でもやる気はでないでしょう。あるいは、社員と顔を合わせても、ニコリともせず、無視するような顔をする。要は、俺は偉いんだ、社長なんだという雰囲気を出すから、経営がうまくいかないのです。社長が自ら、偉そうに振る舞えば振る舞うほど、不愛想にすればするほど、蟻地獄。ますます経営は難しくなるのです。
「運が強いこと」と「愛嬌があること」
松下幸之助さんが、松下政経塾の第一期生を決める面接のとき、私は、ウシオ電機の牛尾治朗会長と組んで、面接官をしました。その直前の広い控室で、牛尾さんが面接書類をパラパラと見ながら、「江口さん、これ、なにを基準にして選ぶの? 受験生は皆、すごい子ばかり。どうするの?」と言います。そう言われても、私もわからない。で、「なにを基準にしたらいいのでしょうね」と戸惑いながら応じると、「松下さんに聞いてきてよ」。
その控室で、ほかの人たちと話をしている松下さんを見ながら、そう言いました。そこで、私は、松下さんのところに行って、尋ねると、「う~ん、そうやなあ、“運が強いこと”と“愛嬌があること”、この2つやなあ」と教えてくれました。
余談になりますが、この話は後日、卒塾生たちが、まるで最初に自分が、松下さんから教えられたかのように話をしているのを、よく耳にします。皆、私の話や書物からの引用であって自分が直接、松下さんから聞いたわけではありません。
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