日本の風景は美しい
あそこに、池のなかの島に石塔が立っておるけど、あれは相当に古いんやで。1200〜1300年前の奈良時代のものらしいな。
一番下の石のところに、四方に仏さんが彫ってあるけど、もう風化してしまって、ようわからんけど、やっぱりなにか雰囲気というものがあるから不思議やな。
向こうの築山の右のところにも、もうひとつ在る。あれは新しそうやな。うん?江戸時代のもんか?あれはぜんぜん傷んではおらんわね。最初はああいうもんもお墓であったんやろうけど、だんだんと庭の景色に取り入れられて、こうして飾り物になっておるんやろうけど、そういう考え方の変化が面白いわね。
きみ、あの島に渡ったことあるか。わし、あるよ。随分とせまいもんやから、池の水がすぐ足もとにきてる感じやな。ああいう小さな島をあそこにつくるというのも、この庭をつくった庭師さんのセンスというもんやろうけど、まさに全体の景色にぴったり当てはまっておる、という感じや。小川治兵衛さんという人は、さすが庭作りの名人といわれた人だけのことはあるわな。
もうそろそろ帰らんといかんな。5時過ぎたか。植木屋さんたちも片付けをはじめとるね。
夕方の景色もきれいや。四季折々の変化、1日の変化、それぞれにええけど、とにかくこの庭だけでなく日本の風景は美しいわね。景色もいいし、まあ、国柄もいい、国民もすばらしい。しみじみ日本に生まれたことの幸せを感ずるね。キミ、そう思わんか。そやろ、そう思うやろ。
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