「苦手なことでも我慢して継続するように」という言葉自体、正当な内容であるだけに、通常、反論ができるはずもなく、そのままその言葉を受け取ります。
それは「苦手なことはやらない→わがままになる、忍耐力がなくなる」という考え方が、一般的に想起されるためです。苦手という言葉の中に、個人の能力と生活習慣・倫理道徳がごちゃまぜになっており、一般的にこのように解釈されてしまうのです。
ところが実際の世の中では、能力は「長所進展法(得意を伸ばす)」といって、短所をいじらずに長所を伸ばすほうが望ましいといわれています。「一般社会では、苦手なことや嫌なことでもやるのが当然だ!」といわれることが多いように思われますが、私の知るかぎりでは、仕事も勉強も生き生きとやる気も持って前進している人は、自分がやりたいことをやっています。つまり長所を伸ばしているのです。短所(苦手)をまったく無視するということではないでしょうが、そこにフォーカスしすぎず、基本的に長所に着目しているのです。そうしていくと、長所が顕在化し、短所が気にならなくなっていくことも多いのではないでしょうか。
しかし、現状の日本の教育では、「総合的にできる子」が評価される状況なので、どうしても弱点部分に目がいき、それを何とかしてあげなくてはならないということに意識が向かいがちです。
弱点部分を克服するということは間違ってはいないのですが、単純に「苦手科目や苦手部分を克服しましょう!」「苦手なことでも継続しましょう!」と根性論を言ってみたところで、もともと面白くなく興味が湧かないことなので、何の解決にもなりません。まさに能出さんのお子さんがその状態にあると思います。
心の状態を転換させる「苦手転換法」
何か問題を解決したいとき、一般的には何(What)が問題で、なぜ(Why)その問題が発生するのかという点を明らかにし、その後の対応(How)を発想し解決したりします。しかし、おそらく子どもの場合、「つまらないから」という言葉で完結してしまうことでしょう。
実際のところ、苦手なことは我慢してやっても、できるようになる場合は少ないのです。しかも何も変化しないならまだしも、苦手感がますます悪化してしまう可能性すらあります。
では、どうしたらいいでしょうか。ひとついい方法があります。それは、「心の状態を転換させる」ということです。具体的には、「苦手改善法」ではなく、「苦手“転換”法」をとる、のです。
苦手改善法とは、ダメな部分に対して「ここはダメだから、できるまでやりなさい」というものです。一方の苦手転換法とは、「ダメな部分を強調しすぎず、さりげなく得意にさせてしまう」という方法です。前者がネガティブアプローチであるのに対して、後者はポジティブアプローチをとっています。
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