ピザ屋が襲われる米国「偽ニュース」の深刻度 どうして人は簡単に騙されるのか

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(写真:ロイターのビデオニュースより)

「パクリ」や「でたらめ記事」に関するニュースが日本でも取りざたされているが、アメリカでも「インチキ記事」(fake news)がネット上に氾濫し、深刻な社会問題となっている。大量のデマ情報がまことしやかに流布し、選挙戦の趨勢に影響を与えたと言う説もあり、今、アメリカのマスメディア、ネット業界が最も関心を寄せるテーマとなっている。

無実のピザ屋が襲われてしまった(ビデオ:Reuters)

なぜ、インターネット上の「ウソ」と「事実」の判別は難しいのか。人はなぜ、「あり得ないようなインチキニュース」を信じてしまうものなのか。

12月4日、ワシントンDCで衝撃的な事件があった。ピザレストランに銃を持った男が押し入り、発砲をしたのだ。「このレストランを舞台に、クリントン氏が児童への性的虐待を行っている」という情報が、多くのゴシップメディアやソーシャルメディアに出回り、男はその情報を信じて、自分の目で確かめに来たと供述した。

バノン氏がデマ情報を大量に発信

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こうしたデマ情報は選挙期間中から、ネット上で急速に増加しており、筆者の日本人の友人の中にも「クリントン夫妻の周辺で不審死が続発し、夫妻が裏で糸を引いている」といった話をまじめにフェイスブックにシェアしてくる人がいた。そもそも、大統領や大統領候補の周りの人が暗殺されている、というこの手の話は昔からよくある陰謀説で、常々話題になってきたが、ヒラリー・クリントン氏を中傷する「デマ」の数は飛びぬけて多く、無数のニュースサイト“もどき”で同様の話が取り上げられている。

人の名前や警察の名前まで登場し、一見すると本当のニュースのように見える。ブログ風なものもあれば、ニュースサイト風のものまでさまざまで、「クリントンには影武者がいる」「クリントンはISISに武器を売った」など、根も葉もない話であふれ返っている。マケドニアの青年が、トランプ支持者向けのデマサイトを多数立ち上げて大儲けしたという話も話題になった。

トランプ支持派の”メディア“の中でも、特に勢いがあるのが、次期大統領の首席戦略官、スティーブ・バノン氏が会長を務める「Breitbart」(ブライトバート)。この「いかさま」っぷりがまた頭抜けている。「世界保健機構(WHO)によると、性転換者のHIV感染率は(普通の)49倍」「避妊は女の魅力を奪い、クレイジーにする」「ハイテク業界で女性に対する偏見があるわけではない。女性は(就活の)面接がド下手なだけ」「クリントンの側近はサウジアラビアのスパイ」などなど、女性、イスラム教徒、ゲイなどへの憎悪と偏見に満ちあふれた内容となっている。

そんなウソには絶対だまされないと自信をお持ちの方も多いかもしれないが、実際には人は案外、簡単に「陰謀説」や「うそ情報」を信じてしまう生き物らしい。スタンフォード大学が1年以上をかけて7800人の学生に実施した調査がある。11月22日に発表したものだ。

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