このように、「ニセニュース」への耐性は自分たちが望むほど高くない。一方で、「インチキ」を指弾し、是正しようとする動きはアメリカではまだあまり顕在化していない。グーグルやフェイスブックへの圧力は強まっており、対策が急がれているが、偽サイトそのものの駆逐はほとんど進んでいないようだ。
前述のブライトバートにしろ、大手メディアはフルボッコで叩いているが、動じる気配はない。どんなにスキャンダラスで不正確な情報であろうと、アメリカ憲法の「表現の自由」を武器に、「ゴシップメディアですから」とか「風刺メディアだから」と言われれば、ぐうの音も出ない。
背景にはマスメディアへの信頼の低さがある
そもそもトランプそのものが「ウソ」や「差別発言」を連発し、ショーなのかリアルなのかがわからない「プロレス」スタイルのコミュニケーションで、求められる「真実性」や「事実性」の水準を極限まで下げてしまった。
また、ウソ情報の氾濫の背景には、そもそものアメリカ人のマスメディアに対する信頼度の低さもある。1997年には53%あった信頼度は2016年には32%まで下落、共和党支持者に限ってはわずか14%だった。日本の数値(民放テレビに対する信頼度100点中59.1点、新聞に対する信頼度68.6点、新聞通信調査会調べ)と比べてもかなり低い。
また、アメリカのマスメディアはどれもリベラルかコンサバティブかに振れることが多く、特に今回の選挙戦ではほぼすべてがクリントン支持に回った。共和党支持者からすれば、どのメディアも「リベラルに偏向しており、中立ではなく、真実は語れない」と見えてしまう。そうしたマスメディアに対する根強い「不信感」や「期待値の低さ」が、偽ニュースサイトに対する抵抗感を弱めている。
「虚構」と「現実」の境界線がかすむ中、個々人がネット上で情報の真贋を見極める目利き力、「メディアリテラシー」を武装していくことが求められる時代になっている。そして、今回の日本での盗用サイトについて一部の専門家やライター、オンラインメディアが詳細に調査し、分析したうえで、問題を提起し、「山を動かした」ことからもわかるように、マスメディアだけにはとどまらない、健全に戦う「ジャーナリズム」こそが、インチキニュースの最大の対抗勢力であり続ける事は間違いないだろう。
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