転職の際「部下」を連れていくことの大問題

誰も望まない残念な結果になる可能性も大

ぜひ後継者にと思っている次期社長が指名する人物ですから「オーナーが面接して合否を決める」とはなかなか言えません。もしかしたら、社内の幹部と相性が悪いかもしれない。あるいは仕事でもめることがあるかもしれないと不安はありましたが、オーナーは条件を呑みました。それくらい、Dさんを高く評価していたのです。

Dさんは流通業界ならだれもが知っている存在。しかも、オーナーが経営してきた化粧品会社とDさんが社長をしている流通会社では、圧倒的にDさんの会社のほうが規模が大きかったのです。格下の会社で社長になってくれるのだから、多少の要求には応えるべきかもしれないという、引け目のある状態も無理な条件を拒否できなかった理由かもしれません。

こうして、新社長は就任に際して、これまでかわいがってきた子飼いの部下を引き連れて、オーナーから会社を引き継ぐこととなりました。

子飼いとは長く関わりがあり、自分が育てた、それゆえ自分のいうことなら何でも聞くような人物。話題の大河ドラマ「真田丸」であれば、豊臣秀吉に小さいころから仕えて大名にまで上り詰めた加藤清正、福島正則あたりのことでしょうか。

Dさんは若手時代から自分が鍛えてきた部下たちに目をつけており、こうした機会に一緒に連れていこうと考えていたのかもしれません。「俺が新たに社長になる会社についてきてくれ」と声をかけると「喜んでついていきます」と戦国時代の武将と重臣の関係のように会社を辞めて、社長についてきました。部下に声をかけて、引き抜く作業はDさんがすべて行いました。オーナーからすれば、これだけ従順な子飼いがいること、さらにヘッドハント会社を使わず、無駄な経費がかからなかったので

「さすがDさん。社長を任せてもまったく心配は不要に違いない」

とも思ったようです。

「子飼いの部下」の登場で組織が混乱

しかし、その確信はもろくも崩れることになります。新社長のつくった新組織では、子飼いの部下たちが要職に任用されました。当然ながら前オーナー時代に要職を任されていた人物で外された人、あるいは間もなく要職に就けると期待していたのに、その機会が失われた人が出てきました。これまでオーナーに高く評価されるためだけ考えてきたことが無駄になってしまう。

次ページ半年もすると辞表を出す幹部人材が出てきた
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