もはや要職には就けないに違いないとモチベーションが落ちて、新組織になって半年もすると辞表を出す幹部人材が出てきました。「嫌ならやめればいい」と言い切れる人材ならいいのですが、これからの会社で重要な役割を担ってほしい人も含まれていました。社内は新社長ではなく、子飼いの部下たちの登場で混乱をし始めてしまったようです。それでも、成果が出ていればいいのですが、組織が混乱して業績は降下する一方。たとえば、
「前職のやり方と違う。自分のスタイルに合わせてほしい」
と社内の仕事のやり方に文句を言って、周囲を自分に合わせることを強要したのですが、そのやり方が業界慣習に合わずに、関係する協力会社からクレームがくることになってしまいました。
あるいはこれまでの取引先を見直して、前職時代の取引先に変更。ところが、質・価格などで大幅に悪化して、顧客が逃げていく要因を生み出してしまいました。
オーナーが社長に復帰することになったが…
こうした、子飼いの部下たちの行動によって、社長の信用は失墜。社内は険悪な雰囲気になっていきました。そして、それから数年が経過して業績はさらに下降。社内でオーナーがかわいがっていた若手社員が続々と退職。数年で別の会社に変貌してしまったと化粧品業界でも話題になるくらいの状態。ここに至り、
「もはや我慢の限界。恥を忍んで社長に復帰するしかない」
と決断。D社長に退任を迫り、オーナーが社長に復帰することになりました。
この事業承継から社長復帰まで約3年を経過。さて、険悪な組織状態を改善し、業績回復にもすぐこぎつけることはできるでしょうか?
残念ながら、回復は困難な状態になっていました。というのも、その3年間で新社長は子飼いの部下を20名以上も追加採用。もはや、組織の中核人材はDさんの子飼いばかりの組織になっていたのです。すでにDさんが辞めたからと、あなたたちも一緒にやめてくれとは言えないくらい影響力がある存在に。
オーナーはもはや70歳を超えました。この組織を立て直すには10年はかかる。それまで、自分が社長を担うことは相当厳しいのは明らか。ときすでに遅し……かもしれないと、早めに手を打たなかったことを大いに悔やむことになりました。
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