日本人の的外れな「リベラルアーツ論」 リベラルアーツとは何か(上)

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どうやら、アートは芸術ではない。サイエンスも理科や科学ではないということに、私は、あるとき気がついた。

私の娘は3歳から英語で教育を受けているので、アートと言えばそのままアート、サイエンスと言えばそのままサイエンスと受け取る。アートを日本語に訳して「芸術」「美術」、サイエンスを「理科」「科学」とは受け取らない。この当たり前のことに気がついて、ようやく私の疑問は解けた。

つまり、そもそもアートやサイエンスの日本語訳が違うのだ。訳が違うというのは、その言葉が持つ概念が違うということである。

アートとは、人間がつくったもの

それでは、アートとは何なのだろうか?

それは、あえて日本語に置き換えれば「人工」ではないだろうか? つまり、人間がつくり出したものすべてがアートである。実際、英英辞典を見ると、「art」はたいてい「human effort to imitate, supplement, alter, or counteract the work of nature.」のように説明されている。

芸術や美術はアートであることは間違いないが、本来のアートはもっと広い意味を持った言葉なのだ。

これは、アートの反対語は何か?と考えると、より理解できる。アートの反対語は「nature、ネイチャー」(自然)である。自然は、人の手が加えられていないものだからだ。

ではネイチャーとは何だろうか? 日本人なら、「自然」と聞けば、空や海、山や森をすぐに思い浮かべる。『広辞苑第五版』(岩波書店)によると、「おのずからそうなっているさま。天然のままで人為が加わらないさま。あるがままのさま」とあるから、このイメージで間違いない。

ところが、英語を話す子供たちは、ネイチャーを海や空、山や森などとは答えず、「things God made」と答える。これは「神がつくったもの」という意味だ。同じく、アートは「things humans made」(人間がつくったもの)である。

このことがわかって、私は初めて、日本語の世界と英語の世界が根本的に違うのだと知った。

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