「寝る直前10分の勉強」が効果絶大なワケ できる子は「海馬の基本」を押さえている

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私が学生の頃に同じ医学部の仲間に勉強法を聞いて回ったことがありますが、そのときも皆、同じように勉強時間を組み立て、すぐに眠っていました。

合格を勝ち取る人というのは、長時間勉強している人ではなく、脳と睡眠の関係を知っている人なのかもしれません。

先日、「睡眠『前』学習」を実践したという小学5年生の女の子のお母さんに話を聞きました。「寝る前10分間勉強」と題して、漢字練習をしてから寝ることを習慣にしたといいます。

その結果はすぐに出ました。2学期の漢字50問テスト満点、学年末の漢字50問テスト満点。寝る前のたったの10分間で、今まで取ったことのない点数を取ることができたと女の子も喜んでいたそうです。

そして一番驚いたのはお母さん。「下の子にも始めました」とおっしゃっていました。私も今後の結果を聞くのがとても楽しみです。

勉強時間の組み立てかた

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夕食後に勉強をするのであれば、まずは算数や数学などの論理的思考能力を使う教科を、寝る時間が近づいてきたら記憶科目に切り替えます。そして暗記をしたらすぐに寝てしまいます。

このように考えると、「一夜漬け」の勉強法が論外だということがわかりますね。せっかく時間をかけて勉強をしても、睡眠をとらなければ、脳は内容を保存することができないからです。

テストが近くになると、「寝る時間を削っても勉強をして、少しでもいい成績をとってほしい」と望むお母さん方が増えるようです。けれども、脳の観点からすると、それはいい方法ではありません。寝ている間に、子どもの脳は昼間の内容をせっせと保存しています。

寝る時間もまた、大切な勉強時間なのです。

(構成:黒坂真由子/イラスト:伊藤ハムスター)

瀧 靖之 東北大学加齢医学研究所教授、医師、医学博士

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たき やすゆき / Yasuyuki Taki

東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人に上る。著書『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、それを子育てに応用した『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』は、それぞれ10万部を突破するベストセラーとなっている。

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