風間流「ポジティブに緊張を利用する方法」 川崎フロンターレ 風間監督のすごいメンタル

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人間というのは場に慣れれば慣れるほど、緊張が薄れ、ミスに対する怖さが鈍感になっていくものだ。いわゆるマンネリであり、新人のときには持っていた必死さやひたむきさが失われていく。

風間とて、その例外ではない。タイトルがかかった試合ならいざ知らず、もはや普段の試合では緊張が高まらなくなっていた。だからこそ、意識的に緊張状態に追い込むことで、真剣勝負に伴う恐怖を呼び起こした。その力を借り、限界を超えてプレーするもうひとりの自分を、深層心理から引き出すのである。

風間は引退後、フジテレビの解説者になってからも、この作業を日課にしていた。生放送といえど、繰り返し出演していると、どうしても油断が生じる。風間は必ず本番当日になると「自分に甘えはないか」と自問自答し、緊張のスイッチを入れた。フジテレビの人気解説者として14年間もトップランナーでいられたのは、突出した戦術眼と言語能力だけでなく、こうした日々の習慣も大きかったに違いない。

緊張をポジティブにとらえれば、大事な場面で頭が真っ白になることもなくなるだろう。意識次第で、緊張は日常のあらゆる場面の油断を排除する最高のツールになる。

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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