人間というのは場に慣れれば慣れるほど、緊張が薄れ、ミスに対する怖さが鈍感になっていくものだ。いわゆるマンネリであり、新人のときには持っていた必死さやひたむきさが失われていく。
風間とて、その例外ではない。タイトルがかかった試合ならいざ知らず、もはや普段の試合では緊張が高まらなくなっていた。だからこそ、意識的に緊張状態に追い込むことで、真剣勝負に伴う恐怖を呼び起こした。その力を借り、限界を超えてプレーするもうひとりの自分を、深層心理から引き出すのである。
風間は引退後、フジテレビの解説者になってからも、この作業を日課にしていた。生放送といえど、繰り返し出演していると、どうしても油断が生じる。風間は必ず本番当日になると「自分に甘えはないか」と自問自答し、緊張のスイッチを入れた。フジテレビの人気解説者として14年間もトップランナーでいられたのは、突出した戦術眼と言語能力だけでなく、こうした日々の習慣も大きかったに違いない。
緊張をポジティブにとらえれば、大事な場面で頭が真っ白になることもなくなるだろう。意識次第で、緊張は日常のあらゆる場面の油断を排除する最高のツールになる。
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