タイガー騒動は対岸の火事か!?

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キャスター/小倉智昭

 不倫をするとトーナメントに出られないものなのか。タイガー・ウッズの愛人騒動は思わぬ展開となり、彼のプレーを楽しみにするファンを悲しませる結果となった。確かに、男としては正直うらやましいが、世間的には常識外の行動。真面目でストイックと言われるタイガーだけに、ニュースや情報番組の餌食となった。

ただ、タイガーのいないマスターズなんて、味も素っ気もなく、早起きしてテレビの前に座るのがおっくうになる。1年間の経済損失6兆円との試算もあながちうそではあるまい。
 金融情報サービスのブルームバーグ発刊の『ビジネスウィーク』誌で、「2010年版スポーツ選手パワー番付」の1位は、昨年に続きタイガーと発表した。これは、スポーツ・フィールド以外の、CM、商標登録などのブランド力の順位。バスケット、アメフト、メジャーリーグのそうそうたる面々を押さえてのトップだ。次回はランクを落とすだろうが、スポンサーの脱落はいかほどか。

不思議なのは、不倫しようと離婚しようと、法に触れないかぎり、プロは試合に出られるはず。もし、御法度なら、米国も日本も、選手の数は半分以下になるのではあるまいか。もちろん遊んだ女性の人数の問題でもないように思う。事情通によると、タイガーの行状はかねてからの不安材料で、PGAは徹底的に隠してきたのだという。貧困と差別の中から努力して初の黒人トッププロとなったタイガー。彼を目標として少年少女がゴルフを始め、ギャラリー数がうなぎ上りになればなるほど、トップを走り続ける憧れの存在でなければならなかった。

トーナメントの現地では、ホテルの部屋とコースの往復だけ。つねに人目にさらされる生活。若いタイガーは耐えられなかったのだろう。ホテルに女性を招く行動は、役員や選手の知るところとなった。それでも、不景気になっても勢いの衰えない男子ツアーは、タイガーに頼らざるをえなかったのである。誰もが口をつぐんで忠告もできず、ただひたすら発覚を恐れていたという。タイガーは自らトーナメントの無期限出場辞退を発表し、沈黙を守っている。だが、タイガーのゴルフ技術、能力、精神力は誰もが認めている。一日も早くコースへの復帰を、と願うのは私だけではあるまい。

ところで、タイガーのニュースを耳にして、日本の選手は大丈夫なのかと思う人もいるだろう。女性問題に限らず、プロの自覚に欠ける人がいるという話をよく聞くからだ。選手同士の会話の中や、トーナメントを観戦するギャラリーの言葉のみならず、取材記者、トーナメント関係者、スポンサーの口から、数人の名前があがっている。多くは誤解によるものと信じたいが、火のないところに煙は、というではないか。ごく少数のプロの人気に頼っている日本のツアー。タイガーの問題を対岸の火事にしないでほしい。

キャスター/小倉智昭(おぐら・ともあき)
1947年秋田県生まれ。東京12チャンネル(現テレビ東京)アナウンサー出身。76年フリーに。現在は『とくダネ!』(フジテレビ系)や『嵐の宿題くん』(NTV系)、『小倉智昭のラジオサーキット』(ニッポン放送)の司会を務めるなど、幅広く活躍中。
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