変わらぬ原点 「ベタ足打法」

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プロゴルファー/青木 功

 持ち球をドローボールからフェードに変えたら成績が安定したり優勝できたりした、といった話は聞いたことがあると思いますが、自分もそんなプロゴルファーの一人です。昔のプロは今と違って、コーチや先輩プロが手取り足取り教えてはくれません。先輩の練習を見たり一緒にラウンドをしたりしたときに、そのプレーをしっかり頭の中に焼き付けて自分のものにする、それが普通でした。だから昔のプロはみんな個性的で、遠くから見ても誰がプレーをしているかすぐにわかりました。

自分もそんな個性的なプレーヤーかもしれません。中学時代、野球をしていたものですからスイングはややフラット、グリップは強めのフック、球筋は当然ドローというよりもフックボールで、フエアウェーのセンターにボールを落としたいときは、右の林の上を狙うほどでした。
 自分は子どものころから背が高く、それでついたニックネームが東京タワー。腕力もありましたから、確かにボールは飛びました。でも、調子が悪くなると曲がり具合がハンパではなく、その癖はプロになっても続いたのです。試合が終盤を迎えるとボールを左の林や池に入れてしまい、何度か優勝を逃したこともありました。
 それでプロになって10年を過ぎたオフシーズンに中学の同級生で現「杉並学院ゴルフ部監督」でもある鷹巣南雄プロに頼み込み、フェードボールに変えるための合宿を一緒にしてもらったのです。

しかし、目で盗んで身に付けたスイングは簡単に変えられるものではありません。合宿では、そのクセのあるフックグリップをスクエアに直し打つのですが、テイクバックの途中で器用にもフックグリップに握り直してしまうのです。
 そこで思いついたのが、スクエアに握った手の指を手ぬぐいでグリップに縛り付けることでした。一日中、縛り付けてボールを打っているのですから、困ったのは夕食の時。左手が固まって開かなくなり茶碗が持てず、鷹巣プロに食事の世話までさせてしまいました。そんな合宿が3カ月も過ぎたころ、やっとフェードボールが打てるようになりました。

では、誰にでもフェードボールがよいかというとそうではないと思っています。と言いますのは、多くのアマチュアゴルファーの球筋はフェードというよりもスライスボール。左ひざや腰が開いてしまいカットボールを打っているのだと思います。フェードに磨きをかけようと思うとなおさら左腰が逃げてしまい、飛距離の落ちる原因となるからです。

ですからアマチュアゴルファーは左ひざや左腰を開かずにボールをたたく。それにはインパクトまで右かかとを上げない「ベタ足打法」でドローボールを打つ、これがゴルフ上達法と考えます。

プロゴルファー/青木 功(あおき・いさお)
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エイジシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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