ここ数年、比較的リーズナブルな料金でゴルフが楽しめるようになってきたとともに、セルフプレーが増えました。それに伴い、今までキャディさんがやってくれたこと、たとえば、バンカー(砂地)に入り付いたボール跡や足跡をレーキで直す、打ったボールが人に当たりそうな方向へ飛んでいったとき危険を知らせる「ファー!!」という大きなかけ声、前の組に遅れないようについていくことはその組全体の責任なのでプレーペースに気を配る、ボールの衝撃によってグリーン面にできたボールマーク(プレーヤー自身によるものに限らない)を直す、というような行為がおろそかになってきているようです。
こういうエチケットに関することは、ゴルフのルールブックの最初に書かれ、ゴルフは、プレーヤーの一人ひとりがほかのプレーヤーに対しても心配りをし、ルールを守ってプレーするというその誠実さに頼っていると述べられています。そのあとに安全の確認、他のプレーヤーに対する心配り、プレーのペース、コース上の先行権、コースの保護という項目が挙げられ、さらに先のような具体的な例が出ているのです。
先日、ゴルフルールの背景にある考え方を学ぼう、という趣旨の講義を聞き、興味深い内容が満載でした。たとえば、230年前初めてエチケット違反に罰金(5シリング)が科され、その30年後にエチケットがルールに組み入れられたそうです。最初はルールブックの後半にあったエチケットも、1899年には中頃に入り、1949年には前文に記されるようになったとのこと。最初からきちんとした人が多かったわけではなく、結構違反する人が多くて困ったようです。
それに、ゴルフはほとんどの場合審判員がついてプレーやスコアを監視しているわけではないので、自律的な自己責任のゲームです。ところが、オフィシャルのゴルフ競技会の第1号と思われるエディンバラ市杯争奪(1744年3月7日開催、5ホールを1ラウンドとし合計3ラウンドのマッチプレー)においては、各組に係員(現在の競技委員)1名が同行する、というのが市議会議事録に残されています。最古のルールと言われる、18世紀中頃にできた13条ルール創設から100年ほどは、他律規制(相手や係員の判断)であったようです。それが、世界中でゴルフ人口が増えていくにつれ、いちいち人を随行させられなくなったため、エチケットが強調されるようになり、自己責任のゲームであると言われ始めたのは20世紀中頃からだそうです。
紳士のスポーツとされるゴルフの歴史をお伺いして、人間は性善か性悪のどちらだろうとの思いを巡らせてしまいました。と同時に、お互いが楽しく気持ちよくプレーするために作り上げてきたエチケットであり、ルールなのだと理解しました。
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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