「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか 格差解消の切り札というが課題は山積だ

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正規と非正規。感情的に割り切れないものの、現実のハードルは高いです(写真:den-sen / PIXTA)

「新しいチーフです。いろいろと教えてあげてくださいね」

半年前。関東圏を中心に展開するファミリーレストランのある店舗で働く主婦パートタイマーの中山さん(仮名)は、新たにチーフとして赴任してきた百田さんを店長から紹介されました。中山さんはこのファミレスの厨房で勤続8年。オーダーに応じて料理を提供するのはもちろん、食材や食器の在庫管理やランチメニューの決定、アルバイトのシフト管理までの幅広い業務をこなしています。

このお店では店長とチーフの正社員2人とパートタイマー6人、学生アルバイト10人で運営しています。正社員は約3年ごとに転勤となるため、最も勤続年数が長いのは店長でもチーフでもなくパートの中山さん。厨房はもとよりホールの業務についても熟知しています。

仕事の中身に大差はないのに賃金格差は大きい

そんな中山さんの不満は、ミスが多いチーフの百田さんとの処遇の差です。チーフの月給は30万円。月間で約200時間勤務しているので、割増賃金を考慮せずに単純に計算するとチーフの時給はざっと1500円。一方、中山さんの現在の時給は1000円にとどまります。

チーフの仕事にはアルバイトの採用や店長不在時の責任者としての役割がありますが、それ以外は中山さんがやっていることとほぼ同じ。この店舗はセントラルキッチンを採用しているため、早出の仕込みといった作業はほとんどなく、また大型スーパーに入っている関係で閉店時間も規則的で、急なアルバイトの欠勤などがない限りは、他の系列店に比べて残業も少ないのが現状です。この8年間で時給が2回しか上がっていない中山さんには、心情的に受け入れられないものがあります。この差はいったい何なのだろう。

正規・非正規の身分を問わずに同じ仕事に対しては同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の導入が議論されています。安倍首相が方針を打ち出しているもので、第1回となる「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が今年3月に開催されました。一般的な日本企業における賃金の決め方は職能給など年齢や勤続年数など属人的な要素が強いのに対し、同一労働同一賃金はその対極にあるといえるでしょう。

厚生労働省の提出資料を見ると、パートタイム労働者や派遣労働者といった、いわゆる非正規労働者の現況報告資料がその大半を占めています。そもそも日本が同一労働同一賃金に進みだした大きな要因は、正社員と非正規労働者の賃金格差が大きいことに起因しています。

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