「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか 格差解消の切り札というが課題は山積だ
中小企業はもっと深刻です。中途採用を前提とし、また、限られた人員で運営しなければならないので、配置転換など人事異動がスムーズに行えない場合は経営上大きなロスを招く恐れがあります。つまり、採用した社員の当たり外れが長らく尾を引いてしまうのです。従来であれば、配置転換などで他部署での適性を見ながら適材適所を模索できたはずが、賃金の関係でそれもままならない状態となり、結果として企業経営に支障をきたしてしまうのです。
中山さんが働くファミリーレストランに同一労働同一賃金(職務給)が導入された場合どのようになるでしょうか。百田チーフと比較した現在の時給1000円は少し上がるかもしれません。仮に1200円になるとしましょう。その差額は百田さんの賞与で調整されるかもしれません。
逆にパートタイマーから正社員になれるのか
また、賃金差が縮まることにより、会社はひょっとしたら中山さんを正社員にしようと考えるかもしれません。その場合、転勤がありうる正社員を中山さんは選択することができるでしょうか。百田さんはチーフとしては能力を発揮できなかった場合、やり直す部署はあるのでしょうか。
賃金の割合に一定の規制をかけなければ名ばかりの同一労働同一賃金になってしまいます。一方、いきなり欧米型の職務給を推進してしまうことにより生き残れない企業も生まれてしまうのではないのでしょうか。もっといえば、日本として同一労働同一賃金を実現するには、個別企業を超えた労働市場におけるジョブの「相場」を形成する必要があります。
はたして、それは日本において実現可能かどうかというと否定的にならざるを得ないのが正直なところです。ただし、企業を個別にみれば、労使合意のもと、正社員の賃金を抑えて非正規労働者との格差解消に成功した「広島電鉄」のような事例があることからも、まったくの絵空事ではないことも事実です。現在の日本にとって、同一労働同一賃金を格差解消の切り札とするには、段階を踏まえたより慎重な議論と推進が求められるところです。
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