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「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか 格差解消の切り札というが課題は山積だ

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  • 大槻 智之 特定社会保険労務士、大槻経営労務管理事務所代表社員
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一方、実際の職務では中山さんには求められていない業務として「アルバイトの採用」「店長代理」「本社への業務連絡」などがあげられます。さらに百田さんはパートである中山さんとは雇用形態が異なります。正社員である百田さんは、雇用慣行として転勤や配置転換、出向などが想定されます。

そういう職務の違いと雇用慣行上の負担や責任の差が、2人の間に差を生むほど価値として差がついているのかどうかが問題なのです。したがって、それが問題とならない場合は、いわゆる「合理的理由」として容認され、認められない場合は差別の解消を図らなくてはなりません。

賃金を「ヒト」から「ジョブ」にひも付けられるか

同一労働同一賃金を本気で実現するとしたら大きな覚悟が必要になります。まず、企業は自社の長年の歴史を根本的に覆すような大転換をしなければなりません。大企業の場合は、その多くが新卒で入社してから結婚、そして扶養家族の増加、定年までと社員のライフステージにあわせて賃金水準を設定していました。「ヒト」にひも付けた賃金設定だったのです。

それが「ジョブ」にひも付けられることによって、賃金を再分配しなければならなくなります。新卒社員と勤続20年のベテラン社員が同一の賃金水準になるかもしれません。さらに、職務給の前提となる職務の価値を決定するための分析と、その評価をしなければなりません。

また、正社員は、現在の自分の職務の価値が決まった場合、それにしたがって賃金が見直されることを受け入れなければなりません。自社の体力が低下しているケースでは、正社員と非正規労働者の均衡を優先するために、他社の同様の職務よりも低い賃金になることも考えられます。

パートタイマーをはじめとした非正規労働者も喜んでばかりはいられません。職務によって、賃金が決定されるため、同じ非正規労働者間において賃金格差が広がることが考えられるのです。いずれにしても、社会そのものが長い目で見ることができた長期雇用型から短期雇用型にシフトされる可能性が大いにあるのです。企業も労働者もその変化に備えなければなりません。

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【中小企業はもっと深刻だ】

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