日本最大のITイベントで語られた、ITベンチャーのホンネ インフィニティ・ベンチャーズ・サミット
よく僕らが最近言うのは、昔ってたぶん日本のサッカーってすごい弱かったよねと。だけど今日本の代表ってめちゃ強くて。実際代表のメンバーたちっていうのは、半分以上ヨーロッパとか一流リーグで活躍できる、インテルのレギュラーとかね、マンチェスター・ユナイテッドに移籍とかということになってるんですけど。たとえば10年前とか20年前だと、ワールドカップに出ることだって僕らが生きてる間にできるかなって、言ってたと思うんですよね。
それが、中田英寿さんが出てきて、まあなんかいろんな人が出てきて、そうするとなんか、あいつにできることは僕もできるんじゃないかってということになってくると、気がつけば、いろんな人が海外に行って、もうかなり強くなってるというふうになってきているように、多分そういうことっていうのはこれからも絶対ありうると思うし。
まあ、そうですね、サイゲームス(注:サイバーエージェントの子会社)も今アメリカですごいし、そういう事例がごろごろ出てくるようになるまで、本当に時間の問題で、DeNAさんも本当にすごいし。だから、僕は日本がそういうふうになるグローバルの中でシリコンバレー級のベンチャー、M&Aが成立したりするというのは、実は時間の問題だと思っているんですよ。
藤田 はい、さすが(ソフトバンクの)孫社長の弟さんだけに夢がありますね。
熊谷 ちょっといいですか。今、藤田君が「熊谷社長は会社を買うのが上手ですし」って、ぼそっておっしゃったんですけど、僕は会社を買うって言ったこともないし、買収するって言ったこともないし、M&Aっていう言葉を使ったことはないし、僕すごい嫌いなキーワードなんですね。
グループジョインしていただくとか、仲間になっていただくとかいうんだけど、買うとかいう言葉はうちのグループでは禁止語になってまして。あと子会社って言ったことはなくて、グループ会社って言うんです。目線が一緒なんです。
ついでに言うとですね、社員っていう言葉も基本的にうちは使うことを禁止していて使ったことがなくて、仲間とかスタッフって呼んでますね。僕、日本語ってけっこう微妙な違いが大きな違いになるので、この辺すごくこだわっているとこでして。だから仲間作りが上手といってくれたら、うれしかったんですけど、そういうことなんですね。
藤田 はい。大変失礼しました。以後気をつけます(一同笑い)。
峰岸 ちょっと、孫さんのお話、すごいよいことをおっしゃってたと思ってて。日本初ベンチャーで私が出資したいっていうのは、日本初でグローバルを前提にした日本初のスタートアップでやっていただきたいなと思っていて。
やっぱりわれわれ、私たちのところに入社してくるITの若い人たちもいっぱいいて。彼らも学生時代に結構アプリ作ってたりとかとかするんですけど、何十万人とか集めて、ちょっと儲かったんですとかいうんですけど、基本的に志が低いと。
もうこういう時代なんで、クラウドでプラットフォームであって、こういう時代なんで基本的にグローバルを前提にして英語でたとえば始めから勝負しなさいというようなことを少し感じてまして、そういう人たちがどんどん出てくれば、本当に事業会社にいっぱい出資するし、エグジットとしてのM&Aの出口としての事業会社ってたくさんですね、出てくると思うんですね。これからはそういう時代じゃないかということを思ってまして。
■海外拠点の位置づけをどうするか
藤田 まさにその話を今、守安さんにしようと思っていたんですけど。DeNAさんに大変お世話になっている「神撃のバハムート」という当社グループのタイトルが全米ナンバーワンになりまして、レイジ・オブ・バハムートという名前で出しているんですけど。本当にやっと今、峰岸さんがおっしゃられたように、日本発で出せるという、売り上げもすごいし、なんか手応えを実績として感じ始めているんですけど。
その一方で、あれ、どうしようみたいに思っていることも僕にはありまして。海外戦略の足場っていうか、切り込み先として当社のナンバー2のCOO(最高執行責任者)の西條(晋一)が、家ごと引っ越してサンフランシスコで世界展開の足掛かりを作ろうと、いろんな事業を立ち上げているんですけど。ヒットしたのが国内で作ったものを出しただけだったということで、海外支社の位置づけはどうしようということで、海外進出するっていうとやっぱりその各地に拠点を作らないといまいち雰囲気が出ないじゃないですか(一同笑い)。
海外拠点の位置づけについて守安さんはどのようにお考えでしょうか?
守安 うちはですね、今、連結で社員が2000人弱。実は日本と海外とほぼ同じぐらいの社員数になるんですよ。かなり海外に人も含めて投資しています。たとえば中国だとか、本当かなり5年前くらいから出て行って、なかなか成功しないながらも、かなりの人が出ていっていると思います。
米国においてもngmoco(エヌジーモコ)という会社を買収して、かなり事業を拡大しているんですけども。何しろこう単発でポンとヒットするんだとしたら、日本でやって出したほうがコミュニケーションが速いし、仕事自体スムーズだなと思っているんですけども。
中長期的に考えると現地でそれこそローカルの人脈もあって、ローカルのこともわかっていて、っていうようなローカルの中で一流の人材っていうのを確保することが、今後の中期的に考えた場合にもすごいグループとして強くなれる要素だと思っていますので。
短期的には日本で英語がわかる人間でポンと作ってヒットしたほうが、早いのかもしれないですけど、中期的で考えると、いろんな地域で、つまりいろんな地域なりのニーズだとか、ローカルコミュニティだとかに入り込んでいく人がグループの中枢にいるということははすごい重要だと思います。ということで、本当に海外拠点は必要だと思います。
藤田 拠点は今後も各地に作っていくイメージなんですか?
守安 すでに、今、10拠点以上ありますので、そこをじゃあ必要なところは作っていかないといけないし、もしかしたら、ちっちゃいところは閉じるかもしれないしということで、いろいろ考えないといけないと思いますけども。少なくとも海外の拠点がないほうがいいと、日本からポンとヒットも出るんで日本で作ったほうが、中長期的にいいという考えは持ってないです。
ただ、拠点数を今の十数個からじゃあ30個まで増やそうとか、このまま維持しようかとか、拠点数に関しては別に増やすところもあれば、閉じるところもある。
藤田 はい。わかりました。それでは、さっき峰岸さんへの最初の質問の続きなんですけど。リクルートがBtoB事業を強化し始めるという、1998年に会社を作ってネット広告代理事業をずっと動かしてるときに、いちばん怖いのがリクルートの営業やっている人たちが、BtoBネット広告やり始めたら、うちなんかちょっとひとたまりもないなと、けっこう危機感をずっと感じていたんですけど。今、人材とか旅行とか、各分野で今後強化されるんだと思うんですけど、それの分野やってる関係者の方がちょっと戦々恐々としちゃうのかもしれないんですけど。
■リクルートがIT人材を増やす理由
それをやると同時にサイトのほうも、強化をしなきゃいけなくなると思うんですけど。技術者の大量採用っていうのは昔、ISDNでしたか? 回線を見据えるような事業に参入するときに、ものすごい優秀な新卒の理系の学生をパッととられた印象がすごくあって、リクルートは採用力があるので、本気でとったら怖いなっていうふうに感じているんですけど、サイトを近く強化するとかそういう技術者採用について何かご計画とかあるんですか? これ、聞いちゃだめですか?
峰岸 今ですね、そうですね。なかなか計画は話せないかもしれないんですけど。今リクルートはグループでそうですね……社員って言っちゃいけないんですけども、社員1万2000人いるんですね。で、従業員全部で合わせると2万名いて、1万2000人のうち10%、ですから1000人弱ぐらいが、いわゆるIT人材なんですね。システムエンジニアを含めたインターネットマーケティングプランナーとかインターネットのディレクターとか、そういう方々も含めて1000名以上います。
リクルートですとやはりオーディエンスデータだとか、けっこうおいしいっていったら失礼なんですが、ライフイベントのメディアもたとえば「スーモ」とか「ゼクシィ」とか、「リクナビ」とか「リクナビネクスト」とかたくさん持ってますので、そこをオーディエンスデータで……と同時にたとえば集客、メディアを集客するのに私たちは、日本で多分1番か2番ぐらいのインターネットの広告主だと思うんですけども。
そういう集客もCRM含めて、ビックデータの分析っていうのにけっこう力を入れてまして、これ皆さんあんまりご存じないんですけど、うちの会社はデータサイエンティストでけっこうメジャーな人間を数十名、今抱えていまして、オプティマイゼーション(=最適化)に関しては相当われわれ自社収入を含めて、あるいはCRMやライフタイムバリュー(=顧客生涯価値)の向上を含めて、相当分析は進めてまして、そういった方々ですとかはすごく強化はしています。マーケティングテクノロジーはすごく強化してますので。そういうことで、基本的に強化しているということでよろしいでしょうか?
藤田 また回線のときみたいに、思い切って採用するわけではないということですね。
峰岸 そうですね。わかりませんね。それはたとえば海外企業の買収によって、一気に日本人のレベルを超えたエンジニアがもしかしたらご一緒にできる可能性もありますし。お一人お一人ずつしっかり人材の紹介という形で、私どもに迎え入れるというパターンもありますし、日本人、海外の方も含めてエンジニアという方は大変重要だと思っています。一緒になるという方法は人材の採用という方法もありますし、M&Aを行うことで、そういった方々が一緒に仲間になるっていうこともあると思っています。
藤田 峰岸さんになってから、買収とか、出資とかけっこう積極的に見えるんですけど、それはそういう方針ということですか?
峰岸 そうですね。このIVSの場に即したお話でいうと……。
藤田 買収って言っちゃだめなんでしたね。
峰岸 そうでしたね。それで言いますと、初めて言いますけども。年間100億程度の投資額で、たとえばベンチャーのシリコンバレー企業ですとか、アジアでのベンチャー企業の方々には投資枠を今設けていますし、優先順位としてはやはり2つ大きな設定があって、人材ビジネスと、住宅とか『ホットペッパー』のレストランとか、飲食・美容の情報面の人材以外のセクターがありまして。まず、直近5、6年でいう優先順位は人材ビジネスで、海外に基盤を作ると、それで言うとこの5、6年で4000億から5000億の投資枠を設けています。それとは別に、年間100億の投資枠でベンチャー企業を中心に出資、ジョイントベンチャーの資金にしているんで、そういう意味では相当積極的にやっていることにはなると思います。