日本最大のITイベントで語られた、ITベンチャーのホンネ インフィニティ・ベンチャーズ・サミット

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6月14日、15日の2日間、北海道札幌市で行われた「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)2012スプリング」。日本、中国のネット系企業を中心に投資を行うベンチャーキャピタル、インフィニティ・ベンチャー・パートナーズが年2回、春と秋に開催している招待制のイベントだ(秋は京都で開催、今年は12月11、12日を予定)。

ITベンチャー業界で最も有名なイベントとして知られる同イベントは、04年11月から始まり、今回で10回目を迎えた。当初は小規模だったが、07年11月から主催者変更に伴う名称の変更を経たのち、現在は600名の参加者を数える規模に拡大した。

本記事では、同イベントで開催されたトークセッションを紹介する。藤田晋サイバーエージェント社長を司会に、守安功ディー・エヌ・エー社長、峰岸真澄リクルート社長、熊谷正寿GMOインターネット会長兼社長、孫泰蔵モビーダジャパン社長が語り合った。

業界向けのイベントだからこそ飛び出す、IT企業家たちのホンネをご覧いただきたい。

                * * *

藤田晋 サイバーエージェント社長 今回はモデレーターとして、個人的に聞きたいことを、聞きたいように聞かせていただきたいと思います。

何年前か、ちょっと忘れちゃったんですけども。まだ南場(智子)さんが社長だった時代に、当社のそんなに立派ではないんですけど、一棟借りしているサイバーエージェントビルというところに南場さんが来てくれて、「本当にきれいで、素敵なビルで、さすがサイバーさん」って言って、そのときは利益で、ディー・エヌ・エー(DeNA)に抜かれてたんですけど、さりげなく嫌みを言われたというか(一同笑い)、経験があって。

確かに、DeNAはけっこう質素なビルで、質実剛健で利益も出して、なんかすごく自分の中で引け目を感じた経験があるんですけども。

ヒカリエの居心地はどうですか?(一同笑い)

 


藤田晋 サイバーエージェント社長

 


守安功 ディー・エヌ・エー社長 僕は個人的に、あんまりこう住んでるところがきれいとか汚いとか、ゴミがあるとかないとか、あんまり物質的な面も含めて、そんなに気にしないタイプなんです。なので個人的には、前の初台のオフィスとヒカリエと通っててもあんまり違いがないんです。

ただ違いがあるとすると徒歩通勤でヒカリエに歩いていくとですね、だいたいこうヒカリエが見えてきたぐらいでグリーさんの「ケルベロス」(注:グリーが提供するゲームタイトル)の看板が見えてくる(一同笑い)。それ以外にあんまりこう違いはなくてですね。

個人的に仕事してる分には違いがないんですけど、社員はすごいモチベーションが上がってますね。そういう意味で社員のやっぱりやる気だとか、また今後の採用だとか含めて、そういうことを気にする人も世の中にはいるんだな、っていうのはですね。僕は全然気にしないんですけど、そういう気にする人も多いんだなというのはあります。

 


守安功 ディー・エヌ・エー社長

 

■大企業病のリスクにどう対処するか

藤田 良かった点と、悪かった点と、将来的な大企業病への懸念みたいなのはないですか? 

守安 それは多分借りているオフィスとかいうだけじゃなくて、人が増えてきたりとかですね、やっぱりいろんな面でそれはありますね。やっぱりこう、ことあるごとに、標語で世界を切り拓く永久ベンチャーっていってですね、たまに社員から「ベンチャーの定義って何ですか」、なんていうのを聞かれたりするんですけど。

ベンチャースピリットだとか、スピードとか変化に対応するだとか、そういうのを含めてやっぱり言い続けていかないと、自分が先導を切ってそれをやっていかないと、大企業病というか、出てくるかもしれないですけども。これはトップの意思として、そうならないようにしていこうってする限りは、何とかやっていけるんじゃないかと思います。

藤田 階は何階でしたっけ? 

守安 21階から26階です。

藤田 当社のビルでいうと、いつもビルの前を「ドリランド」(注:グリーが提供するゲームタイトル)のバスが走っていくんですけども。御社ではドリランドのバスの声が聞こえるんですか。

守安 ドリランドさんのバスで言いますと、初台のときはですね、大抵うちのビルの前にドリランドさんのバスが止まって、バスに乗ってる方がご飯を食べられていましたね。ただ今はそこは止まれない場所なので、通過はしてると思いますけど、たぶん止まってはいないですね。

藤田 じゃあそれは街宣車みたいですね(一同笑い)。はい、では続いて峰岸さん。

インターネット業界は昔から、リクルート出身の人がものすごいたくさんいるし、皆さんご存じのとおりリクナビなど、リクルートのネットビジネスの業績は日本でいちばん大きい規模か、それ相応だと思うんですけども。IVSにリクルートの社長が来たっていうのはもちろん初めてのことなんですが。社内の、社員の社風というか文化というか、ネットビジネス熱はどんな感じなのかなと思いまして。

これは何でこんなことを聞いてるかというと、結構既存の大企業だと、たとえば電通や博報堂、テレビ局、出版社、等々ですね、やっぱり既存のビジネスが本当にすばらしいので、社員が本音で言うとネットをやりたくないんじゃないかと思われることが多いと思うんですけども。リクルートの社内は今どんな雰囲気なんでしょうか? 

峰岸真澄 リクルート社長 どうも、IVSは初めてです。よろしくお願いします。社内のネット熱ですか? 

藤田 社員がネットビジネスに携わりたいのか、それとも紙が苦しくなるからやっているのか。

■リクルートのネットビジネスへの姿勢

峰岸 結論から言いますと、リクルートグループはですね、すでに売り上げのメインがインターネットになっていますので、基本的にはそれがなくては生きていけないという前提になっていますね。

僕は『ゼクシィ』とか『スーモ』、その後『じゃらん』『ホットペッパー』『ポンパレ』の担当役員をやってきて、4年ぐらい前からリクルートの事業開発を担当して、コーポレートベンチャーファンドを作って、シリコンバレーとかアジアのベンチャー企業をずっと回ってたんですよ。

そのとき、リクルートを説明するときに、3つ日本初と世界初があるんだと。世界初が1つと日本初が2つあるといって。日本初の2つはですね、1兆8000億円、昔、借金があったんですよ、リクルートには。1兆8000億円の借金を金融機関の助けなしで無借金で返したって会社は、たぶん日本初。

 


峰岸真澄 リクルート社長

 

それと会社ができて52年目なんですけど、今年で。従業員の平均年齢30歳弱なんですよ。それで保もってるのも、たぶん日本初。最後に世界初なのが、おそらくいろいろ回ってみて感じたのは、紙から始まってインターネットに変えて、ビジネスを。で、利益が紙の時代を超えて、継続的に成長できる会社って、おそらくどこにもなかったですね、いろいろ回って。いろんなベンチャーファンドの人ともお話聞いたんですけど。だけど僕らインターネットで生きるしかないと決めているんですね。社内熱どころかマストですね。おそらく。

藤田 僕はそれを知ってるんですね。知ってるんですけど、リクルートはインターネットがすごいと。だけど、世の中的に、たとえばネットバブルのとき、ヤフーとか、楽天とかっていっていたときに、そんなに名前が挙がってなかったし、PRが弱いとかイメージ的に損してるっていうようなことはないですか? 

峰岸 現実的にたぶん前社長時代、2000年代前半ぐらいに、実際われわれの売り上げ構成シェアはフリーペーパーって結構あったっていうのは確かなんですね。「R25」とか結構メジャーになってましたけども。そこから急激に構成のシェアが変わってきてるということと。あと、そうですね……特に積極的にそこは出てこなかったということでございます。

藤田 峰岸さんが社長になられる前から、ネットビジネスを担当されてらっしゃいましたけど、ネットビジネスを担当していた人が社長になって何か変わったことはありますか? 

峰岸 僕が今、そういう意味で海外の方にもベンチャー、コーポレートファンドで出資するにしても、おカネいらない方がすごく多いので、事業のアライアンスとか、事業会社に出資してもらいたいという、そういう会社のビジネスは大きいと思います。そういうときに多分リクルートを説明しなきゃいけない。

そのときに僕が説明してるのは、リクルートっていうのは基本的には、バーティカル(垂直)。まあこの業界の方だとわかるんですが、バーティカル。ホリゾンタル(水平)ではなくて、バーティカルのジャンルでITのマーケティングプラットホームというものを構築している会社で、それがジャンルでいうとわれわれのジャンル、40ジャンルぐらいあるんですよ。

求人ジャンルとか、たとえば住宅のジャンルとか、レストランのジャンルとか、そういうのを全部合わせると40ぐらいあるんですけど。そのジャンルで、それぞれバーティカルで、マーケティングプラットフォームを作っている。メディアも持ちながら特にわれわれがおそらく強化しているのがエンタープライズマーケット、to Bだと。

 

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