日本最大のITイベントで語られた、ITベンチャーのホンネ インフィニティ・ベンチャーズ・サミット
藤田 さすが、話の数字のケタが大きくて気持ちいいですね。
ではまた熊谷さん。僕はずっとGMOとは近しい位置にいますんで、会社を見ていて、僕自身もずっと苦労してきたことなんですけど、広告代理店事業からメディアに移行するだけでも相当会社の風土を変えるのが大変だった経験があるんですけど、GMOの得意とするインフラ領域のドメインとかサーバーとかセキュリティとかそういった部分と、今、お持ちの広告事業とか、プラットフォーム事業とか、そういったものの両立をどのようにやっていらっしゃるのかとか、どういうふうに……まああの広告代理事業とメディア事業はかなり違うんですけど、とはいえそこまで遠くないと思うんですけど。
インフラ事業に携わる人と、広告とかプラットフォームまあメディアをやる人、かなり違って難しいじゃないかというふうに、勝手に思っているんですけど。どういう企業統治方法をして、やってらっしゃるのかと。
熊谷 まず、インフラの方のメンバーは、極めてシナジーが高い事業体になるので、事業的にはみんな協力し合うことが勝利への道と信じて、すごく一体化してるんですね。たとえばドメイン。今国内で大体85%ぐらいとか、月次ですとほんとに皆さんにお世話になっていまして、90%ぐらいは私どものグループを通じてご登録をいただいていますけども、ドメインって獲得しただけでは、登録しなければ使えないから、自然とサーバーをお使いになる、サーバーをお使いになったら一定の確率で、コマースをされる、コマースをされるとセキュリティ、SSLとか決済をお使いになるということから、いわゆるナチュラルアンドセルフ商材なんですね。ここはだから、事業的には非常にシナジーが出しやすい、一体化しやすい、ビジネスモデルになっています。
藤田 そっちは、すごくシナジーがある気がするんですけど、そうでない部門との価値観の違いとかいうのは、すごく関連がすごく難しいんじゃないかと思うんですけど
熊谷 そこはですね。やっぱり、僕たちなりの企業文化っていうんでしょうかね。以前にもちょっとお話ししたことがあると思うんですけど、私たちなりのグループの聖典みたいなのがありまして、スピリットベンチャー宣言といいますけども。そこに私たちのあり方とか、価値観とか、何を目指しているのかっていうのがきちっと書いてあって、それをみんなが共有しているというところが一体化しやすいところだと思います。
ただ、人材的にはおっしゃるとおり、同じエンジニアさんクリエーターさんでも、インフラエンジニアさんとゲームクリエーターさんは、まったくそういう意味では違いますよね。
でも私たちの目指しているところは、私たちがエンジニアの方とかクリエーターの方を大事にする気持ちというのは、もう伝わっているので、一体化して、家族のように、いわゆる企業統治が行われているということだと思うんです。
よく近頃メディアにご取材いただくんですけど、「GMO Yours」っていう福利厚生設備、社食を提供するコミュニケーションスペースを作ったんですけど、先ほど申し上げましたけど、飲み食いで同じ場所でみんなで過ごして、それこそ金曜日はパーティなんかもやってということがあって、より一層コミュニケーションが良くなって非常に社内は、グループ内はいい雰囲気だなあというふうに思っています。はい、回答になりましたでしょうか。
■ぶっちゃけグーグルはうらやましい
藤田 はい。ありがとうございます。あとですね、これも僕自身が悩んでいることなんですけど、そういうコングロマリット経営、いろんな分野における、金融に対しましても。というのは国内では市場が限られているんで、そうしないとなかなか規模が出てこない。
国内展開はいいんですけど、やっぱりグローバルの市場ととらえようとして、爆発力を生もうとしたら、やっぱり、ヤフーとかグーグルとか、そういうふうにこう明確な1つのサービスのもとに、事業を展開する会社にどうしても、爆発力で負けちゃう気がするんですけど、そういうグローバル的な市場のとらえ方とかを踏まえて僕、悩んでるんですけど、なんかいい方法ないですか?
熊谷 もちろん2050年には1億人の、人口1億人を切るという状況の日本において、このまま……私の命は有限ですけども、企業は無限に継続してほしいので、そういう意味において、成長を続けていくためには、国内での新規事業のみならず、海外展開が成長戦略の重要な柱として考えています。
各サービスで海外に通用するものですね、それはもう着々と海外に進出をしておりまして、たとえば近頃スタートしたのはベトナムで、TENTEN(テンテン)というサービスをスタートしたのですが、これはお名前という意味なんですね。日本のお名前ドットコムのベトナム版をスタートして、すでに登録数はものすごい数字が、期待以上の数字が上がってきていますし。
あと証券事業においては、やはり日本語圏だけではだめなので、今、香港でFXの事業の免許の申請をしておりまして、免許が下り次第営業を開始する予定ですし。
あとは、皆さん昨日のニュースでお聞きになったと思いますけど、新gTLD(=Generic Top Level Domain。一般トップレベルドメイン)が来年スタートいたします。確定これいたしました。僕たちもドメインに関しては、日本で最もいい仲間たちが最高の仲間たちがそろっていると思っていますので、私たちで独自のドメインをとってですね、もう開示されているんで言っていいんだと思いますけども。今、新しく申請していますのは、ドット東京、ドット名古屋、ドット沖縄というような地名と。あとは、企業から依頼を受けましたキヤノンとかですね、そういうドットNHKも私どもが申請をいたしましたし、またこのような申請のお手伝い。自社で取るものとして、ドットショップ、ドットメール、というような、ドメインの申請も行っていまして。これは明確に世界に売れるので、世界戦略の一環というふうに考えています。
それは、ぶっちゃけグーグルうらやましいですよね。藤田君とも夜お酒を飲みながら、「グーグルになりたいんだよ」って。それも多分皆さん、グーグルになりたいんだと思っています。僕も当然そう思っていますけど、でも、それって、ものすごく確率が低いじゃないですか、チャンスがあったらやるけどそれまでは淡々と自らが強くて勝てる分野で、粛々とやっていくという形だと思うんですね。
大当たりを狙うと大外れしますよね。だから地味に淡々と。はい。やるのが、商いは飽きないと。親父ギャグですけど、商いは飽きないというのがポイントになるかなと思っています。回答になりましたでしょうか?
藤田 はい。ありがとうございました。今の話の続きで、今僕もサーバーエージェントっていう社名をアメーバに変えようかなどうしようかなってずっと悩んでるんですけど、DeNAは名前を変えないんですか?
守安 モバゲーに変えようかと思った時期もあったんですけど、なかなかこう……プロ野球の面でいろいろあったりとか、社内でもいろいろあってですね、そこ自体はもうDeNAっていう社名とモバゲーっていうサービスができて両方とも強くするんだと。
たとえばそれこそアップルさんがマックがあってアイフォーンがあってっていう感じで、会社も強いけど、各サービス製品が強いことによって、企業体全部が強くなるっていう事例がありますので。
インターネットサービスではそれこそヤフーとかグーグルとかフェイスブックとか、かなり企業名とサービス名がもうイコールっていうのが多いんですけども、インターネット以外のサービスやプロダクトを見た場合にそうではないという事例がいっぱいありますので。おそらくDeNAっていう会社もグローバルで有名にしていって、そのモバゲーっていう主力サービスも有名にしたい、と今はそういうふうに2軸で…。
藤田 気持ち歯切れが悪いんですけど。やっぱり横浜DeNAベイスターズは損してる感はありますか。
守安 いや。横浜モバゲーベイスターズになったときの世の中の反応の悪さっていったら(一同笑い)、なんて言ったらいいんだろう、すごかったですよね。個人的には横浜モバゲーベイスターズっていうのも十分ありかなって思ったんですけど、今は横浜DeNAベイスターズで頑張ってます。
藤田 はい。ありがとうございました。
では、泰蔵さん。今、力を入れてらっしゃるMOVIDA JAPAN(モビーダジャパン)はワンショット500万円でベンチャー投資をしていくという非常に少額の投資でたくさん投資するんだと思うんですけど。
実は僕も98年に会社を作ったときに、当時インテリジェンスだった宇野(康秀)社長から700万円出資を受けて、たった2年で250億になったっていう、その700万。ネットバブルだったからっていうのはもちろんあるんですけれど、それを目の当たりにして、いつかああいう当て方を自分でもしたいと思ってたんで、非常に良い試みだと思うんですけど。
これはほんとに自信を持って言えるんですけど、当時の僕に700万投資してくれる人はあんまりいなかったていうか、とても投資できなかった、危なっかしさだったんですけど。投資するときの基準をどうされているのかなと思いまして。
■投資判断の際にはビジネスプランを見ない
孫 はい。今ですね、公募を2回やってですね、だいたい1回目は100社ぐらい、2回目も100近く公募があって。実際、あの毎週MOVIDA SCHOOL(モビーダスクール)という形で、いろんな専門家さん迎えて来ていただいて、いろんな講義をしたりしていただいたりして、毎週起業家たちが議論しているうちに、お互い横のつながりができるっていうコミュニティ作りをすごいやってますけど。
その中でだいたい20社弱ぐらい、投資をすると決めた状態なんですけど、基本的に事業計画とかも見ない、人物とプロトタイプのデモのみですぐに決めるという形をとっています。
というのも、僕自身も96年からずっと、ベンチャー見てきたんですけど、ここ2、3年の動きを見ていて、自分の……たまに成功したものもあるんですけどいっぱい失敗してね、ノウハウ系はいっぱいたまってると思うんですけど、自分の成功体験とか、ノウハウがまったく陳腐化しているということを最近すごく感じています。
なので自分の経験とか、これがいいんじゃないかっていうのを全部捨ててます。なんでかっていうと極めて明快になってて、ゲームのルール、世の中のビジネスのゲーム、ルールが変わったんですね。
たとえばわれわれのときは、本当に新しいサービスを作ろうとすると、サーバーとかインフラを用意するだけですごいおカネがかかって、そのおカネを調達するのがなかなかできなくて、やりたいネタがいっぱいあるのにやれなかった。それをどうやって調達する……なんとかガンガン、インフラの人だましてというような、サービスにするかってというとこがすごい大事だったんですけど、今はもうクラウドの時代なので、所有する必要もないし。
それから、ソーシャルメディアもあるので、いいサービスからあっという間に口コミで広がるということで、イニシャルコストがぜんぜんかからないんですよね。開発とかも、昔は仕様書とかを書いて、プロジェクトマネジメントをやってっていうのが、開発までのプロセスで当たり前でしたけど、今はシリコンバレーも含めて世界中のベンチャーって仕様書とか書かないし、いきなり作っちゃうんですよね。