ピケティ絶賛!格差解消の切り札はこれだ 平等な社会に向けた現実的なビジョン

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だがこの批判はまさに、本書の主な強みにもなっている。基本的には、アトキンソンは臆病な政府が行動しない口実など本当は持っていないことを示している。というのも、自国だけでも行動することは十分可能だからだ。アトキンソンが提示する行動計画の核心は、国際的な協力といったあてにならない見通しを待つことなしにイギリスが単独実施できるものだ。それを言うなら、イギリス以外の国にも修正して適用できるのだ。

EUに抱いている幻滅。しかし、希望の炎は消したくない

行間を読めば間違いなく、アトキンソンがEUに対して抱いている幻滅をある程度はかいま見られる。でもアトキンソンが指摘するように、彼はEUの昔からの支持者であり、特にイギリスが1973年にEU加盟を果たしたときにはそうだった。その時代、多くの加盟国はイギリスの福祉国家の税収により財源(特に国民健康サービス)を疑問視した。

それは、福祉国家の費用が雇用者の負担となっている諸国にとって、容認し難い競争形態と見られた。当時のイギリス左派の相当部分は、ヨーロッパとその「純粋で完全」な競争へのこだわりのなかに、社会正義と平等性の政策に対する敵意を見て取った。「当時、こうした疑念は正当なものではなかった」とアトキンソンは語る。ここには、現在ならもっと正当性があると付け加えたい雰囲気が感じられるが、アトキンソンは決してそこまでは言わない。EUの希望の炎を消したくないからだ。

本書は楽観論者であり、イギリス、ヨーロッパ、全世界の市民によって書かれた本だ。それが伝える、もっと公正な経済についての幅広い感覚は、本書が持つ多くの魅力の一つだ。それは個別の選挙の結果がどうなろうと、モデルとなる本なのである。

トマ・ピケティ パリ経済学校経済学教授

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Thomas Piketty

社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESSおよびロンドン経済学校(LSE)で博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭を執る。2000年からEHESS教授、2007年からパリ経済学校教授。

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