米国を最悪の不平等国にしたのは誰なのか スティグリッツ氏による格差問題の考察

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脱・不平等国に向け 累進税、教育投資を提唱

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「1%対99%」の格差が米国をはじめ世界的に大きな問題になり、フランスのトマ・ピケティ教授の『21世紀の資本』が話題になっているが、それ以前からこの問題を論じていたのが著者のスティグリッツ氏である。

そのスティグリッツ氏が米ニューヨーク・タイムズをはじめとする新聞や雑誌に寄稿したものをまとめ、さらにこれを体系化した論文を加えたのが、この本である。

米国を「最悪の不平等国」にしたのは誰なのか。それはグローバル化と新自由主義政策を進めてきたレーガン政権以来の米国政府や議会のように見えるが、実際にはその背後にウォール街の金融資本家たちがいる。共和党のブッシュ両政権はもちろんのこと、民主党のオバマ政権もこの点では共通している。

著者は、かつて民主党のクリントン政権の下で大統領経済諮問委員長を務め、さらに世界銀行の上級副総裁まで務めていたことのある行動する経済学者だが、それだけに政権のウラの事情についても詳しい。

著者は「不平等は必然ではない」とし、経済のグローバル化、そして経済の金融化を進めた政府にまさに責任があるとしているのだが、ではこの不平等の問題を解決するにはどうしたらよいのか。

それには累進制の高率税制を導入して金融投機を抑えることと同時に、教育への投資など、かつて大恐慌期に行われたニューディール政策に匹敵するような政策を導入することが必要だという。

この本では米国や欧州についてばかりでなく、中国やインド、シンガポールなどについても論じられている。日本については「反面教師ではなく、手本にすべきだ」として、アベノミクスを高く評価している。これについては大いに異論がある。

著者
Joseph E. Stiglitz(ジョセフ・E・スティグリッツ)
2001年「情報の経済学」を築き上げた功績によりノーベル経済学賞受賞。1943年生まれ。米イェール大学、英オックスフォード大学、米スタンフォード大学などで教鞭を執る。米国大統領経済諮問委員長、世界銀行上級副総裁などの役職で政策の運営にも携わった。

 

奥村 宏 会社学研究家
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