くっきり浮かび上がる 米国現代ビジネスの素顔
現代社会に欠かせない、エレクトロニクス産業の基礎を築いたインテルの、傑出した3人のCEOの才能と個性を通して、企業とは、経営とは、研究・開発とは、競争とは、そしてリーダーとは何かを鮮やかに描いた「産業史」の傑作である。
現代技術の進化の象徴ともいえる「ムーアの法則」(コンピュータ・チップの性能は1年半から2年ごとに2倍になる)を唱えたゴードン・ムーア。彼は出会った人々を魅了し敬愛された。女性を含め皆から愛されたロバート・ノイスは、インテルを率いた傑出した技術者でありリーダーだった。そしてホロコーストと共産主義という二つの狂気と圧政から脱出した、先見性、決断力、強い意志に富むアンドレー・グローブ。この3人のCEOが織りなす、半導体産業の中心であり続けた企業の陰影は、それぞれの存在が欠かせないものとして、原題にある「TRINITY」(三位一体)と言うにふさわしい。
紹介されている、ムーアによる1965年の技術の予測には、携帯、自動車の自動制御、電子腕時計など並んでいるが、彼らの卓越した先見性に驚く。
膨大な本書から溢れてくる「物語」は、素晴らしい翻訳も手伝って、さまざま場所で読者を立ち止まらせる。会議とはどういう場か。ビジネスの場で怒りはどのようにして克服(発散)するのか。個人と企業による困難への立ち向かい方。そして何よりも大きな失敗からの学び方だ。友情、確執、勝利、敗北、そして理解。登場人物の日々は読者の日々と重なるだろう。
インテルを語りながら、シリコンバレー(まさに半導体の谷)の始まりとその後の発展をスケッチし、それによって米国(そして世界)の現代ビジネスの素顔をくっきりと浮かび上がらせる傑作である。
マイケル・マローン(Michael S. Malone)
米サンタクララ大学非常勤教授。米ウォールストリート・ジャーナルにインテル担当として長年にわたり定期寄稿。米サンノゼ・マーキュリーニュースでの調査報道でピュリッツァー賞候補に2度選ばれる。サンタクララ大学でMBAを取得。
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