混乱を作り出したのは米国と指弾
毎日の新聞を読んでいると、「イスラーム国」(IS)というのは国家ではなく、中東におけるテロリストの集団であり、まるで「悪の権化」のように報じられている。
そして、今米国もロシアもイスラーム国に対する空爆をシリア領内で行っていることが報道されている。
ところが、イスラーム国はイラクの半分、シリアの半分を支配しており、経済的にも自立した国家である、と著者は言う。
著者はパレスチナのガザに生まれ、エジプトのカイロ大学を卒業したあとジャーナリストとして活躍している。本拠を英国に移しているが、今やアラブの代表的知識人として知られている人物である。
この本ではシリアやイラクの活動家はもちろんのこと、欧州や米国の政治家や軍人などにも直接会って取材し、イスラーム国の成立から現在に至るまでの状況を詳しく紹介している。
シリアやイラクをはじめとする中東の混乱した状況は今世界中の注目を集めているが、そもそもそのような混乱した状況はいつ、どこから、なぜ起こったのだろうか。
それは湾岸戦争に始まり、そして米国のブッシュ(子)大統領の時代に行われたイラク攻撃によって深まったものだ。
著者によれば「イスラーム国は米国が作ったのだ」とさえ言われている、という。
これに対してイラクやシリア、さらにサウジアラビアや欧州の各国からも義勇軍が参加して、米国に対抗してイスラーム国を支援している。
イスラーム国は暴力に訴えているが、なぜ、そうなったのか、ということも詳しく分析している。
中東の混乱した状況を作り出したのは石油の利権を追求する米国にある、という指摘は重い。
アブドルバーリ・アトワーン (Abdel Bari Atwan)
アラブ初の「ハフィントン・ポスト」型ニュースサイト「ラーイ・アルヨウム」の編集長。作家。1950年パレスチナ、ガザ生まれ。ロンドンを本拠とするクドス・アラビー紙編集長を25年間務めた後、現職。著書に『アルカーイダ秘史』など。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら