去る7月14日、イランと米国など6カ国(米露中英仏独)による、核問題に関する「最終合意」が発表され、イランにおけるウランの濃縮活動を一定レベル以下に制限し(今後15年、ウランの濃縮度を3.67%以下にとどめる)、制限に伴って過剰となる濃縮設備(遠心分離機)を削減すること、またイランに対する査察のありかたおよび制裁措置の軽減・撤廃などが合意された。
長く、かつ困難な交渉の結果であり、イランが核兵器を開発する道はほぼ閉ざされたと見てよい。米国にとって中東は最も困難な地域であり、今回の合意はオバマ政権の外交上一大成果になりうる。
また、この合意は核問題に限らず、イランと西側諸国(日本を含め)との関係、中東情勢(過激派組織ISを含め)、さらには米ロ関係など広い範囲に影響を及ぼすものだ。
まず、今回の合意の基本を押さえるところから話を進めよう。
イスラエルが強硬に反対を表明
もともと、イランとの交渉には反対論、懐疑論が強かった。イスラエルのネタニヤフ首相が外交上の慣例を無視して、米政府に事前に協議も通報もしないまま、去る3月3日、米国議会の上下両院合同会議で演説し、イランによるテロ支援を指摘しつつ制裁の強化を訴えたこともあった。
今回の合意について、イスラエルは「歴史的な誤り」だと非難し、イランは合意を履行せず、制裁措置が軽減されていく間に核兵器製造のために必要な技術を習得すると主張している。
国際的に弱い立場にあるイスラエルを擁護する牙城である米国議会でも、今回の合意については懐疑的な見方が強く、当初、共和党議員のほぼ全員が反対し、オバマ大統領の支持母体である民主党からも懐疑的な態度を示す議員が出ていた。
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