なぜ経営陣が不仲な企業が成功できるのか インテルの創業者3人が織りなす愛憎劇

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インテルをつくった3人の男たち。左からアンディ・グローブ、ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア。1975年に撮影。これが3人が一緒に写っている唯一の写真だという
「コンピュータの性能は18カ月ごとに指数関数的に向上する」。今年は、インテルの創業者のひとりであるゴードン・ムーアが「ムーアの法則」を提唱してから50年になる。また、一枚のシリコンの上に極小の回路を重ねるというアイデアは、1971年にマイクロプロセッサという革新的な商品に結実、後のPC社会、モバイル社会の基礎を築くことになる。
すべての産業の基本となるコンピュータ産業をつくった「世界でもっとも重要な会社」インテル。そのインサイドストーリーを綴ったマイケル・マーロン著『インテル 世界でもっとも重要な会社の産業史』を、『ストーリーとしての競争戦略』の著者でもある一橋大学大学院教授の楠木建氏が読みとく。

 

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創業直後からの急成長。その後の停滞と苦境。マイクロプロセッサー事業の爆発的成功――。その経済的な成功のみならず、世界中の人々の生活に与えたインパクトの大きさや、企業としての成長と進化のダイナミックさにおいて、インテルは現存する中で最も偉大な歴史に彩られた会社である。

ただし、インテルという「世界で最も重要な会社」の軌跡や半導体産業の発展史を知りたくてこの本を手に取った人は、読み始めてすぐに肩透かしにあうだろう。その手の俯瞰的・客観的な記述はそもそも著者の意図するところではない。インテルの経営史や半導体の産業史についての記述は必要十分に盛り込まれてはいる。しかし、それは本書の主題を効果的に浮き立たせるための背景に過ぎない。

歴史ドキュメントというよりは、人間ドラマ

表舞台に出てくるのは、この偉大な会社を創り上げた3人の人物である。共同創業者のロバート・ノイスとゴードン・ムーア、さらにはインテルの「採用者第一号」であり、後継のCEOとして君臨することになるアンディ・グローブ。この3人の特異な人物と、3者の間に期せずして生まれたそれ以上に特異な人間関係と相互作用。長大な本書を通じて、著者の関心はインテルの輝かしい歴史を創造した「トリニティ(三位一体)」に一貫して向けられている。この本は企業の歴史ドキュメントというよりは、人間ドラマの書といってよい。

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