大企業からイノベーションが生まれない理由 一度始めた事業に固執して撤退ができない
山田:Qrioのスマートロックが9月に発売予定です。
伊佐山:事前予約分は8月に売るため、量産を始めています。Qrioのプロジェクトにはソニーからの関係会社を含め、80人ぐらいの従業員がかかわっていると聞いています。このプロジェクトがうまくいったら、ベンチャーと大企業が協業するケーススタディとしてシェアできると思います。
このプロジェクトには多くのソニー社員が協力をしています。Qrioの社員だけではないわけです。量産過程に移る前に、ソニーの製造現場のエンジニアが設計にダメ出しをしてくれたおかげで、中身は試作品とはまったく違うものになったという経緯もあります。スマートロックにはソニーのさまざまな部署の方がかかわっており、当初は想定していなかったような部署とも繋がり始めています。そのたびにすばらしい指摘を受けるので、どんどん商品の完成度が上がっていくのです。
多くの人たちがかかわってくれることが大きな利点
ひとつのテーマを基に多くの部署や関係会社の専門家がかかわってくれる――これが非常に大きな利点です。普通にハードウエアベンチャーを経営しようとすれば、どうなるか。今、IoT(物のインターネット)がはやっていますが、ハードは量産段階でものすごくおカネがかかる。米国のベンチャーをみても、20~30億円という増資を1年に1回ぐらいのペースでやっていかないと、まともなハードウェアベンチャーは立ち上げられない。それぐらい、おカネがかかるものなんです。要するに、ネットサービス、ソフトウエアベンチャーとはちょっと違う。
Qrioもハードウエアを作っているベンチャーですが、つねにソニーの人たちの知恵とかノウハウにアクセスすることができる。しかも、それはベンチャー企業として人件費を100%抱えるわけではないので、経営上も非常に効率的です。マックス80人ぐらいの関係者がいた場合、これはすさまじいコストのはずなのに、「ジョイント・ベンチャーで、しかもソニーにもラーニングや面白いプロジェクトに感化されるメリットがある」ということで協力をしてくれている。必要最小限のコストは当然払っていますが、これをまともに負担したら立ち上げも相当大変であったことは明らかです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら