大企業からイノベーションが生まれない理由 一度始めた事業に固執して撤退ができない

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山田:こうした日本型のイノベーションを成功させる秘訣はどこにありますか。

伊佐山:うまく進めるためには、経営陣を巻き込んで、何度でもトライする文化を普及させることです。「いや、そんなのはもう世の中にあるよ」とか、「そんなの昔、いろいろな人がトライしててダメだよ」という言い方でプロジェクトを潰すのはやめたほうがいい。

1回失敗したものは、実は宝の山ですよ。ベンチャー投資で失敗するケースとは何か。事業の成功の秘訣は何か。こういう話を米国の有名な投資家や経営者とすると、ほとんどの人が「タイミング」といいます。おカネ、技術力、チームも大事ですが、この「タイミング」を間違えたら、成功は難しい。

「タイミング」の重要性

事業が成功する要因の7割ぐらいがタイミングだとすると、この部分は残念ながらコントロールできない。だから打つ回数を増やすしかない。最高のチームを集めました。最高の技術もそろえました。おカネもうなるほど集めました。それでも失敗するプロジェクトがいっぱいある。タイミングをミスすると、そうなっちゃうわけです。

ということは過去に失敗したものであっても、もう一度トライしてもいい。「去年もやったんだけど、去年と今年は違う」ということはあるんです。だけど、突っ込みすぎて脱線しないように、そこは数字で管理し、「ここまで使ってダメだったら撤退しましょう」という形で進めていく必要があります。

山田:大企業は撤退が苦手ですね。いったん始めると止められない。「社長直轄だから」「実力専務のプロジェクトだから」という具合におかしな作用が働いてしまう。

伊佐山:大企業の場合は、プロジェクトを始める前にものすごい時間と調整使うので、1回走り出したら止めにくい。準備期間が多ければ多いほど、迷惑をかける関係者が多くなってしまう。ビジネススクールでは「Escalation of commitment」(立場固定)という言葉で習いますよね。

その点、僕らはパッと始めて3カ月後うまくいかなければ、「はい潰しましょう」と言って潰す。当事者に「潰そう」って言わせるのは、すごく心理的にハードルが上がるので、僕が潰せばいいんです。「ごめんなさい。僕が潰します。皆さんは3カ月間いろいろやってもらってご迷惑をかけたけれど、皆さんが悪いわけじゃなくて、僕の見立てが悪かった。また新しいプロジェクトをやりましょうね」って言ってしまえばいい。こうすれば、お互い無駄な時間とリソースを費やさずにハッピーだと思うんですよね。

※後編は8月27日公開予定です

(撮影:今井康一)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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