大企業からイノベーションが生まれない理由

一度始めた事業に固執して撤退ができない

伊佐山:つまり、ものすごくリーンな体制でハードウエアベンチャーを立ち上げることができた。

大企業が持っているヒト・モノ・カネのインフラを貸してもらうことで、ベンチャーとしてすべて自前でまかなうための大きな資金を集めなくてもいいという、非常に効率的なベンチャーインキュベーションのモデルです。今後、Qrioでは第2弾、第3弾のプロダクトも開発していきます。

山田:なぜそこにWiLがかかわる必要があるのでしょうか。やろうと思えば、ソニーだけでもできそうに見えますが。

伊佐山:ソニーは品質基準も含め、すごく厳しいプロセスを経て製品化する。それがソニーのメソッドで、強さの源泉です。しかし、Qrioの場合、それよりもスピードを重視している。製品の完成度以上に市場に製品を投入するタイミングや、ユーザーから直接得られるフィードバックを重視します。今回のスマートロックをソニーでやったら発売は来年夏だったかもしれない。ある程度、必要最小限の機能がそろって、ハードができればもう出してしまう、というベンチャー的なスピード感でやっています。

山田:ソニーだけではスピードアップができない?

伊佐山:難しいと思います。いい意味でも悪い意味でも、ソニーという会社の歴史とロゴの重みというのはそこにあるのではないでしょうか。それが信用=ブランドの強さにもつながっている。だけど現場にいる人たちは、すべての製品を従来のプロセスでやっていたら、エッジが立っていれば立つほどシリコンバレーのベンチャーに負けてしまう。

WiLの最大の役割はジレンマを解決すること

だから、そこのジレンマを解決するのがまさにWiLの最大の役割だと考えています。よく日本の大企業を馬鹿にするような論評もありますが、そんなことはない。自社内に眠る、多くの面白い技術を、気軽に製品化したり、サービスにすることが構造的に難しいことが問題なのです。シリコンバレーで出てくるような面白いネタは技術的にはどの大企業もできる。振り返れば、iPodだってiPhoneだって日本で作ることができたわけです。

たとえば、ドローンです。これも日本企業のほうが絶対にうまく作れますよ。だけど、ドローンの規制がきちんとわからない中、ドローンについてこれだけ不祥事が起きている中、たとえばソニーが、ソニーというロゴの付いたドローンを積極的に製品化をする決断はなかなか難しい。

僕は、ソニーのエンジニアが全力で作ったドローンは、絶対GoProの人たちが作るドローンとか、DJIのドローンよりはるかにいいものが作れると信じています。でも会社のブランドとか信用、既存の製品との相性などが、こういう場面では邪魔をするわけです。それはもったいないじゃないですか、外部から見ると。

そのひとつの解決策は、別の会社が別のブランドで出しますよ、ということです。しかもソニーの子会社じゃなくて、あくまでベンチャー企業として出すわけです。それがQrioの組み方です。

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