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それでも日銀「10月利上げ」はありうる理由/超多忙の高市首相と植田総裁の面会はまだ実現せず…/「アベノミクス2.0」でも利上げは進む

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政権発足後の高市首相は多忙で、10月27日時点ではまだ植田和男日銀総裁との面会は実現していない(写真:Bloomberg)

高市早苗政権が発足した。高市氏による「アベノミクス2.0」的なリフレ政策再来への期待から、株価は目下絶好調である。ただ、安倍政権の「アベノミクス1.0」開始時点とは経済状況は大きく異なる。当然「2.0」は「1.0」の単純な焼き直しであるはずはないし、あるべきでもない。この点は、後ほど詳述したい。

10月利上げに機は熟したが…

さて、この連載を継続してお読みいただいている読者は、筆者がトランプ大統領就任後の3月から一貫して、ぶれることなく、日銀の次の利上げは、株価波乱などの事情がない限り、秋(9月か10月)であると予想してきたことをご存じであろう。

元日銀企画局審議役が日本&アメリカの金融政策を徹底予測

理由はいくつもある。消費者物価上昇率はすでに3年間も2%を上回っており、現在も3%前後で高止まりしている。特に、生活に身近な食料品の値上げは広範だ。また、円安の進行で電気代やガソリンなどエネルギーの値上げの再加速も予想される。物価高対策が最大の政治課題なら、円安を漫然と放置することは許されない。

賃金は人手不足もあって中小企業を含め、高めの伸びを示している。実質金利は物価上昇率が高止まりしていることから、名目長期金利の上昇にもかかわらず、はっきりとマイナスとなっており、緩和的な金融環境が継続している。

トランプ関税が、日本経済に一定の負荷をかけていることは確かだろうが、日米関税交渉が一応の妥結をみたことで、不確実性は相当程度解消された。

企業収益も日経平均採用銘柄の加重平均EPS(一株当たり利益)でみれば、トランプ関税発表前の3月末の水準を上回ってきており、関税の逆風にもかかわらず増益が視野に入ってきた。

9月調査の日銀短観では、中小企業を含む全産業ベースで4.8%と小幅の減益であるが、前回6月短観からは0.9ポイント上方修正された。業況判断D.I.は全産業全規模で+15とプラスである。そして株価は史上最高値を連日更新するほど絶好調である。

期待インフレがわずかに2%に届いていないとか、需給ギャップが0%近辺で過熱感はないといった「利上げをしない理由」を探すことはできる。ただ、大幅マイナスの実質金利を微調整できないほど弱い経済環境とは思えない。だからこそ9月の金融政策決定会合では、2人の委員が利上げを支持したわけである。

7月の参議院選以降、自民党内の権力闘争が3カ月もの長期戦にならなければ、10月利上げは、順当に行われていたはずである。

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