ピケティ絶賛!格差解消の切り札はこれだ

平等な社会に向けた現実的なビジョン

こうした提案は統計的にも収支があうし、税で完全に財源が確保できるものだが、もしそれが採用されれば、イギリスの不平等と貧困水準は大きく下がるだろう。アトキンソンとサザーランドのシミュレーションによると、それらの水準は現在のアメリカに準ずる水準から、ヨーロッパやOECDの平均程度にまで近づく。これはアトキンソンの第一の提案セットの中心的な目標だ。財政的再分配ですべてが解決すると思ってはいけないが、それでもどこかから手を着ける必要があるのだ。

ラディカルな改革主義:権利の新しい哲学

だがアトキンソンの行動計画は、そこで止まりなどしない。彼のプログラムの核心にあるのは、労働と資本の市場の働きそのものを転換させようという狙いだ。そのために、いまは最も少ない権利しか持たない人々のために、新しい権利を導入しようとする。その提案には、失業者のための最低賃金での公共雇用保証、労働組合の新しい権利、技術変化の公的規制、資本アクセスの民主化が含まれる。これは本書で提案された多くの改革のさわりでしかない。

こうした提案を詳述する代わりに、私は資本と所有権へのもっと広いアクセスの問題に特に注目したい。アトキンソンはここで、ことさら革新的な提案を二つしている。一つは、国民的貯蓄プログラムを創設し、預金者がみんな資本に対する収益保証を受けられるようにする(対象となる個人の資本量には上限を設ける)というものだ。

公平な金融収益に対するアクセスにはひどい不平等があり、特に出発点となる投資の規模で収益率が大きく変わる(この状況はほぼ間違いなく、過去数十年の金融規制緩和により悪化した)。それを考えると、この提案は特にしっかりしたものだと私には思える。アトキンソンの見方では、それは公共財産への新しいアプローチというもっと大きな問題と密接に絡み合っており、新しい形のソヴリン・ウェルス・ファンド創設の可能性とも関係してくる。公共当局は、単に債務を積み上げ続け、持ち物をすべて果てしなく民営化するだけではすまないはずだ。

一方で、国民保証保険つき貯蓄プログラムと並行して、アトキンソンは「万人に相続財産を」プログラムの創設を唱える。これはあらゆる若き市民が18歳で成人年齢に達したら、資本給付をもらえるという形を採る。こうした給付はすべて、相続税やもっと累進的な税構造を財源とする。具体的な形で、アトキンソンは現在のイギリス相続税からの税収を見れば、新成人1人当たり5000ポンドを少し上回る資本給付の財源となると推計している。

そして相続税制の大幅な改革を訴え、特に大規模な遺産では累進性を高めろと主張する(所得税と同じく、上限税率を65パーセントと提案している)。こうした改革は、新成人1人当たり1万ポンドの資本給付を可能にする。

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