日本で貧富の格差が拡大してきた本当の原因

アトキンソン「21世紀の不平等」から考える

アンソニー・アトキンソンの指摘とは?(写真:M・O/PIXTA)

『21世紀の資本』で話題になったトマ・ピケティ(1971-)の師でもある不平等問題の大家、アンソニー・アトキンソン(1944-)は、世界的に第二次世界大戦後に不平等が縮小し、その後1980年代以降格差が再び拡大した原因の一つに、労働分配率の動きがあると指摘している。

1950年代から1970年代にかけて多くの国で労働分配率は上昇したが、その後2000年代にかけては資本の取り分が上昇(労働分配率は低下)した。日本は例外的に2000年代にかけても労働分配率の上昇が続いたと述べている(Anthony B. Atkinson, “Inequality: What Can Be Done?”, Harvard University Press 2015)。

しかし、日本の労働分配率の動きをると、欧米諸国に遅れて1990年代がピークになっているが、その後は労働分配率が低下傾向に転じているように見える。

労働分配率の低下による相乗効果

この連載の一覧はこちら

経済が発展していく原動力は、資本の蓄積と人口の増加、そして技術進歩だ。一見、経済が発展してビルや工場の設備などの資本が増えていくと国民所得から資本への分配が増えてしまい賃金が圧迫されそうにみえる。しかし、ニコラス・カルドア(1908-1986)は経済成長について長期的に観察される事実として、国民所得の労働と資本に対する分配率はほぼ一定だということを指摘している。

教科書で習うコブ・ダグラス型の生産関数では、市場原理が働けば、資本の蓄積が進むと資本収益率が低下して労働分配率は一定に保たれる。技術進歩があれば、労働の取り分も資本の取り分も拡大することが可能になる。

次ページ現実の経済では?
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • グローバルアイ
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 最新の週刊東洋経済
  • 若者のための経済学
トレンドライブラリーAD
人気の動画
東芝、会社「3分割」に残る懸念
東芝、会社「3分割」に残る懸念
節約志向で「安い食品ばかり買う」人の重大盲点
節約志向で「安い食品ばかり買う」人の重大盲点
EVの切り札?夢の「全固体電池」は何がスゴいのか
EVの切り札?夢の「全固体電池」は何がスゴいのか
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「非財務」で生きる会社、死ぬ<br>会社 企業価値の新常識

今や株価を決める最大の要因は「非財務情報」というのが世界の常識に。優れた開示を行えば企業価値の向上につながる一方で、開示が不十分だと株を売られるリスクも。企業価値の新常識をめぐる混乱とその対処法に迫りました。

東洋経済education×ICT