もっぱら消費者物価の上昇を狙う政策は誤り 物価指標ならGDPデフレータに注目すべき

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2014年4月の消費増税以後、企業が値上げをしやすい雰囲気ができ、加工食品の値上げが相次いだ(撮影:今井康一)

一口に「物価」というが、実際には様々な指標がある。最も馴染みが深いのは、消費者物価だろう。日本銀行が金融政策を決定する際の指標としているのも消費者物価指数だ。この他にも、企業間で取引される財の物価である企業物価指数や、企業間で取引されるサービスの物価である企業向けサービス価格指数がある。もっと広い意味では、地価や不動産価格、時間当たり賃金も「物価」の一種と言えるだろうし、GDP(国内総生産)デフレータはGDPの「物価」と考えることができるだろう。インフレやデフレをどのような物価指標で判断すればよいのか、昔から議論があった。

海外を要因とするインフレ率は大きく変動

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消費者物価指数(総合)は、2013年春ごろから前年同月比の下落幅が縮小傾向となり、6月からは上昇に転じた。2014年5月には消費税率の引き上げの影響も加わって前年同月比上昇率は3.7%に達した。しかし、その後次第に上昇幅は縮小し、増税の影響が無くなった2015年9月には前年同月比0%になっている。

ところがGDPデフレータの方は、2015年4-6月期の前年同期比1.5%から7-9月期には1.8%の上昇となっていて、上昇率はむしろ拡大している。

2014年春に行われた消費税率の引き上げの影響を除去してみると、消費者物価指数(CPI)とGDPデフレータの動きの対比はより鮮明だ。

2014年春ごろには、消費税率引き上げの影響を除いても消費者物価の上昇率は前年比で1%半ばだったが、最近ではゼロ近辺に低下している。これに対して、GDPデフレータは同じ時期にゼロ近辺から1%台後半へと上昇幅が拡大している。

このような違いが出るのは、GDPデフレータが海外の影響で起こった物価上昇分を取り除き、純粋に国内で発生した物価上昇だけを表しているからだ。GDP統計の中で消費者物価に近い民間最終消費支出デフレータの動きは、消費者物価指数とほぼ平行して動いているのが分かる。

GDPデフレータは、名目GDPを実質GDPで割ったもの、と定義される。経済学の入門書にあるように、GDPを需要面から計算すると、民間最終消費支出、企業の設備投資、政府支出などの国内需要に、輸出を加えて輸入を控除する。このため、GDPデフレータでは輸入物価の上昇の影響がマイナスとなる(控除される)からだ。

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