日銀は消費者物価を金融政策に直結する経済指標としているが、最終的にはGDPデフレータが上昇して企業の利益が増え、雇用者は賃金が上昇するということが実現しなくては意味がない。消費者物価上昇率を2%にするということに意味があったのは、「物価の下落が続く」という消費者と企業の期待(予想)を変えるという点についてである。
国内要因による物価上昇でないと賃金は上がらず
石油危機が起こった際には、GDPデフレータの上昇率が低かったことから、これは輸入インフレであってホームメードのインフレではないという議論があった。確かに原油価格の大幅な上昇が物価上昇の原因だったのだが、金融引締めなどの景気抑制策が必要であったのは、当時の日本経済ではインフレ期待(予想)が強く、これが、制御できないほど強まることを恐れたからだ。第2次石油危機への対処がうまくいったのは、インフレ期待を制御しながら輸入物価の上昇をうまく国内物価に転嫁させていくことができたからだと考える。
原油価格の上昇や円安による輸入食料品の価格上昇が原因で消費者物価が上昇するようになっても、経済の好循環にはつながらない。起点をどこに求めるかは議論の余地があるが、物価上昇が賃金の上昇を引き起こし、所得の増加で消費が拡大して物価が上昇する、という、賃金上昇と物価上昇のスパイラルが復活するためには、物価の上昇が国内要因によるものであることが必要だ。
日本経済が順調に拡大していくためには、消費者物価指数が上昇することは必要条件ではあるものの、それだけでは十分ではない。GDPデフレータが上昇するようになっているかどうかが重要だ。そろそろ、どのような手段でもよいから消費者物価を上昇させればよいという単純な議論から脱却することが必要である。
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